2012年05月05日

帰ってきた『タイタニック』

(注)この日記には、『タイタニック 3D』の内容が一部含まれておりますことをご了承ください。

●はじめに●

 高1の娘と『タイタニック 3D』を観に行った。
 『タイタニック』は、1997年に公開されたときも劇場に足を運び、感動を心に焼き付けている。
 だが、1996年生まれの娘は当時1歳。どんな映画か知る由もない。
「お母さん、『タイタニック』ってどんな映画?」
「ジャックという貧乏な青年と、ローズというお金持ちのお嬢様が、タイタニック号で出会い、恋に落ちる話よ」
「でも、タイタニックは沈没するんでしょ」
「そう。きっと3Dだと迫力があると思うよ」
「へー、楽しみだね」
 1998年のアカデミー賞では、監督賞、作品賞をはじめとして、実に11部門を受賞している。興行収入の記録も作り、『アバター』に抜かれるまで首位をキープしていた大ヒット映画だ。
 帰ってきてくれて、本当にうれしい。


●あらすじ●

 ユナイテッド・シネマのIMAX3Dは、スクリーンやサウンドに工夫を凝らし、より臨場感の味わえる劇場らしい。料金は2200円と高めだし、高校生も一般料金になってしまうが、見ごたえがあって大変よかった。
 1997年に戻った気持ちで、スクリーンに向かい合う。
 ジャック役は、言わずと知れた、レオナルド・ディカプリオだ。レオ様と呼ばれた当時は、人気絶頂でCMなどにも引っ張りだこであった。私の友人などは、映画にまったく興味がなかったが、「ディカプリオだか、ディプカリオだか知らないけど、いい男ね」などと評価していた。貫禄のついた今と違い、肌がきれいで、若さあふれる青年役が似合っている。
 ローズ役のケイト・ウィンスレットは、ため息が出るほど美しい。実業家の御曹司に熱望されるのもわかるくらい、説得力のある美貌である。しかも、美しいだけでなく、救命ボートの数が足りないことを即座に見抜く聡明さや、過酷な運命に立ち向かう強さをも併せ持っている。
 この二人が魅かれあい、お互いを大事な存在と認識していく前半は、きらびやかな船内、心地よい音楽、気品のある衣装に魅了される。華やかさに酔ってしまうのだ。
 やがて、船が氷山に接触すると、一気に酔いがさめる。
 圧倒的な力で海水が迫る後半は、我先に逃げようとする醜さや、自分の都合しか考えられない弱さが描かれ、いかに人間がちっぽけな存在かを思い知らされる。沈没の過程がリアルすぎて、自分も海に投げ出されそうで怖くなる。
 3時間以上という長い上映時間だから、途中でトイレに行きたくなるのではと心配していた。
しかし、それは杞憂に終わった。
 スピーディーで、時間を感じさせないストーリー展開には脱帽する。ジャックとローズをはじめとする、乗客の安否に心を奪われ、尿意を感じる暇さえなかった。気がついたら、終わっていたという感じだ。だが、肉体的な疲労は3時間分だから、劇場内が明るくなっても、すぐには立ち上がれなかったりする。周りの観客も、同じようなものだった。
「すごく泣けたし、迫力があってすごかった。今まで観た映画の中で、一番よかったよ!」
 娘が、興奮気味に語る。勧めた私も、大満足である。


●プログラム●

「プログラムが欲しい」
「2Dのなら、お母さんが持ってるけど」
「でも、記念に3Dのを買いたい」
 娘の強い希望で、プログラムを買ってみる。もし、同じだったら怒るところである。
 しかし、ちゃんと3D用になっていた。

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 裏はこうなっている。

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 ちなみに、1997年の2Dはこれだ。

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 こちらも、裏返してみる。

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 両者の比較が興味深い。
 まず、上映時間である。3Dは3時間16分と書いてあるが、2Dは3時間14分となっている。2分の差は何だろう。まさか、テープが伸びた、なんてことはないと思うが……。
 内容もかなり違う。2Dでは、映画ができるまでのエピソードや、実際の乗客、タイタニック号の軌跡などに重点を置いていた。ミュージシャンの細野晴臣氏の祖父も、ただ一人の日本人として、この船に乗っていたという。無事、生還できたからこそ、YMOのテクノサウンドが楽しめたわけだ。
 3Dでは、3D変換の意義や技法について、紹介されている。変換作業は簡単なのかと思ったら、実に60週間、つまり1年以上かかったそうだ。その甲斐あってか、写真はどれも鮮明で色鮮やかになっている。
「買ってよかった」と娘は大喜びだ。
 ついでに、主題歌であるセリーヌ・ディオンの「My heart will go on」を、ipodに入れていた。
 私の頭からも、この歌が離れなくて困ってしまう。
 しばらくは、タイタニックモードで過ごそう。

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2012年04月01日

ドラえもんの気持ち

 茨城の友人が、どら焼きを送ってくれた。
 土浦に本店を構える「志ち乃(しちの)」という店のものらしい。

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 どうやら、かなり有名な店で、遠方からの客も多いと聞く。それもそのはず、同封されている商品案内を見ると、どら焼きだけでも「キューイ」「小倉」「抹茶」「生チョコ」など、ユニークな上、種類が豊富なのだ。人気があるのも頷ける。
 私がいただいたものは、カスタードクリームの中に生クリームが入った「カスタード」と、粒あんの中にフレッシュバターが入った「バタ」だった。

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 一階に住む89歳の義母にも、「カスタード」をおすそ分けした。義母は、スイーツに目がないので、「変わっているわね」と大喜びである。
「消費期限が明日までなので、気をつけてくださいね」
「大丈夫よ、すぐ食べちゃうもの」
 美味しいものは日持ちしない。夏場は2日、冬場は3日がリミットだが、今すぐにでも食べ始めそうな様子を見ると、取り越し苦労のようだ。
 時計を見ると、もうすぐお昼時だ。食後に食べようと思い、箱のふたを閉めた。
 昼食の支度をしていると、ドスドスという足音とともに、夫が階段を上がってきた。
「おふくろが、砂希さんにどら焼きをもらったって言ってるけど、俺の分はあるの?」
「あるよ」
「腹が減ったから食べたい」
 夫の嗅覚はすさまじい……。定年を迎えると、食べることだけが楽しみのようだから、まあ大目に見よう。
 昼食を終え、ようやく、私がどら焼きにありつけるときがきた。
 まずは、「バタ」を取り出す。半分に切ると、粒あんの中の、薄くスライスしたバターが見える。

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 このバターの存在感がいい。あっさりしたあんの中心にデンと居座り、かすかな塩気を感じさせるのだ。口を動かすたびに、バターが広範囲に広がり、塩味と甘味が一体化していく。斬新な味わいだ。
 次は、「カスタード」に手を伸ばす。こちらは、カスタードクリームと生クリームの二重構造である。

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 この組み合わせは、シュークリームなどでもお馴染みだが、どら焼きでお目にかかるのは初めてだ。
 とろりとしたカスタードクリームに、ほどよい甘さの生クリームが溶け合って、実にいいコンビネーションである。そして、このコンビを支えているのが、外側のカステラなのだ。密度が低くて、とても軽い。それなのに、適度な弾力性があって、ふわっとした食感が楽しめる。こちらも美味しかった。
「へえ、こんなどら焼きもあるんだね! 面白い」
 娘も絶賛していた。

 勤務先の近くにも、どら焼きで有名な店がある。東京都北区の「黒松本舗 草月」だ。こちらも、遠方からの客が多く、昼過ぎには売切れてしまうと聞く。お遣い物として、何度かちょうだいしたことがあり、地元でも根強い人気を誇っている。

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「黒松」は、黒糖と蜂蜜を使い、独特の味に仕上がっている。あんと黒糖がこんなにマッチするとは知らなかった。一度ご賞味されてはいかがだろうか。
 今までに、かなりの数のどら焼きを食べてきた。
 それぞれ、味も違って個性があるから、決して飽きることはない。
 ドラえもんの気持ちが、ちょっぴりわかるような気がした。

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2012年02月19日

牡蠣づくしの幸せ

●牡蠣事情●

 去年までは、半月に一度の割合で牡蠣が食卓に上っていた。
 私だけでなく、夫も娘も牡蠣が大好きだ。フライやグラタン、鍋料理などで活躍する。
 だが、今年は事情が違う。
「当たったらイヤだから、牡蠣は出さないで」
 受験でピリピリしている娘が、牡蠣を拒否するものだから、今シーズンはお預けだ。ずっと食べていない。十分に過熱すれば平気だと言っても、頑として譲らない。しょうがないから我慢していたが、もう2月も半ばを過ぎた。いい加減、待ちきれなくなっている。
「どこかの店で食べようかな」とずるい考えが浮かんできた。万一、当たったとしても自分だけだから大事ないだろう。問題は同行者だ。夫は忠実に言いつけを守ろうとして、反対するだろうから誘えない。姉と妹は牡蠣が食べられないし、職場の仲良し女性も、牡蠣はフライのみしか受け付けない。かといって、一人で行くのは淋しいから、好き嫌いのない悪友、幸枝に付きあってもらうことにした。
 場所は、東京・茅場町にある「にほんばし牡蠣や 新川河岸(しんかわがし)」である。
 まだ新しい店のようだが、週末とあって、まずまずの賑わいだ。全国各地の牡蠣が食べられるという話だから、何日も前から楽しみにしていた。


●牡蠣づくしの定食●

 団体客の予約が多かったのか、通されたのはカウンター席であった。狭いところが玉に瑕である。だが、向かい側には貫禄たっぷりの、店主らしき男性がいる。こちらの様子をこまめにチェックし、あれこれ世話を焼いてくれたり、説明してくれたりするから、かえってテーブル席よりよかった。
 私たちが注文したのは、牡蠣づくしの定食というメニューだ。
 20年前に仙台に行ったときも、牡蠣づくしコースを頼み、お腹いっぱいになって感動したことがある。生牡蠣から始まって、土手鍋まで、気仙沼の牡蠣を堪能した。震災後の今は、そんな状況ではないだろう。復興を祈るばかりである。
 この店の牡蠣づくしは、東京にいながら各地の牡蠣が楽しめるという点が売りだ。ワインとビールで乾杯するや否や、一品目の生牡蠣3個が運ばれてきた。
 給仕のお姉さんが「右から順に…」と産地の説明をすると、店主が口をはさんできた。
「違う違う。皿が逆なんだよ。一番大きいのが七尾」
 彼は皿の上下をひっくり返し、再度説明を加えた。
「右が七尾、真ん中が的矢、左が土佐です」
「ほおお〜」

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 お料理の内容は、ブログのためにメモを取る。熱心な客だと思ったのか、店主がいいものをくれた。
「メニューにはさんである紙、持って行っていいですよ」

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 これはすごい。産地だけでなく、それぞれの特徴まで書いてあるではないか。
「ありがとうございま〜す!」
 私は丁重に礼を言って、参考資料をしまいこんだ。まったく、よく気の回る店主である。いや、こういう店では大将といったほうがいいのか。もし夫だったら、恥ずかしげもなく「マスター!」などと呼びそうだが、それはちょっと違うだろう。
 まず、大きな七尾から口に入れた。「ミネラル感たっぷりで甘味もある」と書いてあるので、きっとそうなのだ。順番で、次は真ん中の的矢を食べた。「さっぱりのうちに甘味渋みがにじみ出る」とあるが、違いがよくわからない。最後の土佐は、「黒潮の味と牡蠣の甘味が旨」なのだが、これも似たりよったりだ。我ながら、張り合いのない客だと苦笑した。
 隣の幸枝を見ると、私とは逆の順番で食べている。大きい七尾が最後ということは、楽しみをあとに残すタイプなのかもしれない。
 食べている途中で、牡蠣フライが運ばれてきた。これは呉倉橋島産らしい。

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 わりあい小粒だが、そのぶん味が凝縮されているような気がする。
 実は、お料理が出るスピードが早く、牡蠣フライに手をつける前に3品目が運ばれてきた。
「左が酒蒸し、右が焼牡蠣。どちらも赤穂です」
 
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 殻を取って撮影すればよかったのだが、酒蒸しは身が縮んで小さくなり、焼牡蠣は大きいままだった。調理の仕方で、大きさが変わるところが興味深い。
 生牡蠣もいいが、私は酒蒸しが気に入った。牡蠣は、過熱したほうが好みなのだ。
 3品目を食べ終わり、卓上を片付けたら、次は牡蠣しゃぶしゃぶである。昆布の入った鍋に、野菜、牡蠣、ポン酢などが運ばれてくる。野菜が煮えるまで小休止だ。
 しゃぶしゃぶの牡蠣は、右が赤穂、中央が呉、左が九十九島と並んでいる。

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 赤穂の特徴は「フレッシュで貝柱が旨い」、呉は「一年牡蠣のフレッシュな味わい」、九十九島は「さっぱり塩味と甘さが旨い」なのだという。
 お姉さんが、「殻は入れないでくださいね」と念を押す。普通は身だけにするだろうが、中には想定外の行為に及ぶ客もいるようだ。殻ごとしゃぶしゃぶを想像したら、おかしくなった。
 鍋が沸騰してくると、カウンターの中から大将が声をかけてくる。
「牡蠣は8秒入れてくださいね、8秒」
「8秒」
 私も幸枝も、復唱して確認する。ずいぶん短い。過熱しすぎないようにすることが大事らしい。
 まずは、幸枝が挑戦する。牡蠣を入れたら、計測開始だ。
「いーち、にい、さあん、しい……」
 保守的なカウントアップ式を採用しているが、8からのカウントダウンも面白いと思う。

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「なな、はーち、よしっ」
 幸枝はすばやく箸で身をすくい、小鉢に移した。次は私の番である。
「いーち、にい……」
 大きな牡蠣が、徐々に小さくなる様子が見える。
「ろーく、なな、はち」
 箸を突っ込んで引き上げると、わずか8秒でもシュワシュワと湯気が立ち、熱そうだ……。ポン酢をつけて冷ましたつもりが、口に入れたら拒絶された。
「あっち〜!」
 外側はもちろん、中にも結構、熱が通っている。たしかに、8秒で十分と納得した。
 3個目の牡蠣は、箸を滑らせて10秒入れてしまったが、味の違いはわからない。産地ごとの微妙な違いもイマイチわからないし、まだまだ初心者と感じた。
 野菜を平らげて、体が汗ばむくらいに温まると、また大将から声がかかる。
「牡蠣ご飯をご用意してもよろしいですか?」
「はい、お願いします」
 いやあ、ここは本当に仕事が早い。定食の最後が牡蠣ご飯なのだが、スタートから1時間もあれば十分だ。2時間程度を予想していたので、待ち時間が少なくありがたい。

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 牡蠣ご飯は、濃すぎず薄すぎずの味付けでグッド。
 ああ、日本人でよかった。
 

●食後●

 食事を終えて外に向かうと、出入口のカウンターにカードのようなものが置いてあった。よく見ずに、一枚もらって店を出る。今度は、受験が終わってから家族で来てもいい。
 明るいところでカードを見たら、それは名刺だった。裏面には地図が印刷されている。

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 彼の肩書きは「店長」だった。「支配人」と書いてあったら引くが、「主人」などとつけても違和感なしである。もちろん、「マスター」がそぐわないことは言うまでもない……。

 岡田さん、その節はお世話になりました。
 また行きます!

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2012年01月14日

アマリリス日記

●11月23日●

 妹宅が完成し、新築祝いに呼ばれた。
「これ、お返しだから持っていって」
 姉と母、それに私は、重箱くらいの大きさのおみやげをもらった。箱の外側には「アマリリス」と書かれており、品種は「ピンクパラダイス」となっている。

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 目に飛び込んでくる濃いピンクが可愛い。
 家に帰って箱を開けると、控えめな芽が顔を出している。

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 鉢の下には、ジャンボ玉ねぎっぽい球根があるに違いない。水は週に一度、180cc程度と書かれていた。私は計量カップで水を量り、アマリリスにやった。
 先が楽しみだ。


●12月11日●

 アマリリスを、室外に出してはいけないという。日当たりのよい室内で育てるのだそうだ。
 東側の出窓に置いて、大きくなるのを待った。
 その甲斐あって、芽が伸びてきた。

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「おおっ」と夫も感動している。
 生命の鼓動が伝わってきた。


●12月18日●

 ときどき、鉢を回して日の当たる位置を変えてやる。
 アマリリスはニョキニョキと伸び、背高のっぽになった。

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 娘が、腑に落ちない顔で聞いてくる。
「ねえ、これ、本当にアマリリス? ネギじゃないの?」
「……」


●12月29日●

 娘にバカにされ、「今に見ておれ」と思ったのだろうか。ネギリリス、いや、アマリリスは、つぼみを開き始めた。

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 開花間近である。後ろのほうにもつぼみがあり、こちらもふくらみ始めている。

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 にぎやかになりそう。
「ああ、やっぱり、アマリリスだったんだね」
 娘も、ようやく納得したらしい。


●12月31日●

 いよいよ開花か。

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 にぎやかな新年を迎えられそうだ。

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●1月2日●

 花びらがピンと伸び、ピンクパラダイスはようやく咲いた。

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 パッケージのイラストより美しい。
 私は喜び、妹と姉に写メを送った。


●1月4日●

 このアマリリスは、一度に4つの花が咲くらしい。

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 東西南北でいうならば、東が咲き、西ももうじき満開になるところだ。
 南と北は、つぼみをじりじりと成長させている。


●1月9日●

 ついに、最後のつぼみが咲き、4つの花が勢ぞろいした。

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 圧巻。


●競演●

 姉が持ち帰ったアマリリスは種類が違う。
 1月6日に「ウチも咲いた」と写メが来た。

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 こちらは、花びらが多くてゴージャスだ。

 妹からも、1月7日に開花を知らせるメールが来た。

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 ウチのアマリリスと似ているが、白い部分が多いかな。

 唯一、母から開花を知らせる連絡が来ない。
 もう、70歳になるおばあさんだから、きっと、やり方がわからないのだろう。
 ぜひ見たいのだが。

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2011年12月26日

トレフミヤモト忘年ディナー

●プラス ムッシュ●

 お友達マダムの涼子さんから、忘年会をしたいというメールが来た。
 3月の震災後、一度お食事会があったのだが、体調がよくなかったことに加えて、帰りの電車が不安だったので行かなかった。たぶん、一年ぶりにお会いするわけだ。
 私は張り切って返信をした。
「前から行ってみたいお店があるんです。もちろん、智恵子さんもお誘いして、にぎやかにしましょう」
 すぐ涼子さんから返事が来た。
「じゃあ、お店はお任せします。いつがいいですか」
「クリスマス前だったら、大体大丈夫です」
 送信しようとして、ふと、研二さんのことを思い出した。
 研二さんというのは、涼子さんと同年代の男性で、私たちの共通の友人である。震災後のお食事会は、ひさびさに彼が企画し、声をかけてもらった。あのとき、お断りしたのは申し訳なかったという思いがある。
「研二さんにも声をかけますか?」
 メールにそう付け加えると、涼子さんも「ぜひ、そうしましょう」と乗り気になった。
 そんなわけで、今回は、マダム涼子とマダム智恵子に加えて、マダム見習い中のワタクシ、ムッシュの研二さんの4人でディナーを楽しむことになった。


●メアド問題●

 行きたいお店とは、六本木にあるフレンチレストラン「トレフミヤモト」である。
 インターネットでお店探しをしていたとき、本格的なフレンチの雰囲気が漂っていたので、いつかは行かなくてはと狙っていたのだ。しかし、ランチは曜日が限定されているし、席数も多くないので、先延ばしにしていた。
 月曜定休だが、12月はディナーのみ営業しているらしい。電話をかけてみると、あっさり予約が取れた。早速、涼子さんと智恵子さんにメールを送る。
 実は、研二さんのメアドを知らない。涼子さんに送っておけば、メアドを知っている彼女が転送してくれる。私が直接メールすれば、涼子さんの手間が省けるのだが、私は異性のアドレスを聞くことに慣れていない。
 なんとなくタイミングを逃して、伝言ゲームのようなやり取りを続けた。
「各自でホームページをご覧になって、お料理のご希望をメールしてください」
 マダム2人に送信すると、涼子さんからはこんな返事がくる。
「ホームページを見ましたが、私も研二さんも、砂希さんにお任せするということでお願いします」
 結局、直接のコンタクトがないまま、ディナー当日を迎えた。


● Menu C ●

 私が選んだものは、menu C「本日おすすめのシェフ特別コース」である。
 お店に着くと、マダム宮本が品のある笑顔でお迎えしてくれる。今日は、マダムだらけだ。
 先に来ていた涼子さんと研二さんは、すでにグラスを傾けていた。
「砂希さん、お久しぶり。もう、いただいているわよ。食前酒のハスカップですって」
「まあ、美味しそう」
 マダム宮本が、すぐに私のハスカップを運んできた。

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 さっぱりした甘さで、いい感じ。
 じきに智恵子さんも登場し、お食事がスタートした。
 まずは、1皿目の前菜だ。
 ガラスの皿は、一人ひとり違った柄になっている。私の前に置かれた皿は、青一色で、少々単調だった。隣の涼子さんの皿をチラ見すると、そちらの柄がよく見える。
「そのお皿、いいですね」
 もの欲しそうな言葉を投げかけると、彼女は私の意図を理解したようだった。
「気に入った? 交換しましょうか」
「ええ、ぜひ」
 お皿を入れ替えていたら、研二さんが「うわ〜、信じられない」と呆れていた。
 うん? これって、マナー違反?

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 コースには入っていないが、オプションで「トマトのサラダ」をつけてもらうことができる。これは、こちらの名物料理で、てんとう虫のデザインとなっている。ぜひとも食べてみたかったのだ。
ちなみに、触覚にはネギを使用しているらしい。

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「かわいい〜♪」
 ナイフを入れるのが気の毒だったが、目をつぶってカットする。
 サクッ。
 濃いトマトの味が、口いっぱいに広がった。
 満足、満足。
 
 焼きたてのパンも、本格的だ。

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 右のパンは胡麻で、左の3連のパンは赤ワインである。上中央のパンは……忘れた。ついついパンを食べすぎて、お料理が入らなくなるお客さんもいるという。
 それは、よくわかる気がする。

 前菜2皿目は、フォアグラとトリュフの一口ソースコロッケである。

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「こちらのフィンガーボウルで指を洗っていただき、手づかみでお召し上がりください」
 マダム宮本の説明によると、中にはトロトロのソースが入っているため、コロッケを傾けて口に流し込むようにするそうだ。
「変わったお料理ね……」
 涼子さんも研二さんも、少々鼻白んでいる。私も、地味な見た目にだまされた。
 しかし、これはかなりの自信作らしい。
 長時間煮込んだ濃厚なソースの中で、フォアグラとトリュフが調和して、なめらかでコクのある絶品に仕上がっている。4人とも「美味しい!」と声を上げ、見事なお味に感心した。

 前菜3皿目は、ミネストローネだ。

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 なんとも、ユニークなカップである。立ててもよし、斜めに傾けてもよし。さまざまな角度で安定する、不思議なカップだ。こちらも美味しくいただいた。
 魚料理は伊勢海老である。

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 とっても幸せな気分になる。

 肉料理は鹿だった。

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 クセがあることを心配したが、あっさりしていて、大変食べやすかった。
「へえ、鹿って結構美味しいのね」
 智恵子さんも、満足のご様子である。

 あとには、デザートが続く。

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 さらに、コーヒーとお茶菓子。

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 昔話に花が咲き、楽しい忘年ディナーが終了した。
 今度は、家族と来たい。
「じゃあ、俺は日比谷線で帰るから」
 研二さんが、ひとあし先に、メトロの階段を降りていった。
 結局、メアドは聞かなかった……。

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2011年11月20日

スチームサワで風邪退治

●ひさびさの風邪●

 夕方、喉がヒリヒリと痛んだ。このところ健康で、風邪は何年もひいていない。「まあ大丈夫だろう」と高をくくっていたら、翌日には軽く咳き込むようになってしまった。

 いかん、風邪だ……。

 この時点ではまだ、私はこれをなめていた。2週間後に、今年の風邪は咳が長引いてしつこいのだと、身をもって知ることになる。
 私の場合、風邪のひき始めは、たいてい喉からだ。熱が出ることは稀で、鼻水がズルズルしたあとは、放っておいても一週間ほどで治る。ツラいときは医者に行くこともあるが、今回は妊娠しているかもしれないので、そのまま様子を見ることにした。
 しかし、気がついたら2週間も咳が続いている。これは尋常でない。
 喉は痛いというより、かゆいほうに近い。だが、鼻の奥が乾燥しているようで、ひきつれたような痛みを感じる。これがどうにも耐えがたく、何とかならないかとイライラしていた。
 そのとき、思い出した。

 そうだ、スチームサワがあったじゃない!


●スチームサワ●

 娘が保育園児だった頃、よく風邪をひいていた。鼻と喉の保湿によいからと、オムロンのスチームサワを買ったのだが、成長とともに使わなくなった。もう何年も、屋根裏収納庫で眠ったままだ。
 
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 ボイラータンクと給水カップに水を入れ、スイッチオンにするだけで、温かいスチームが出てきて鼻と喉を潤す製品である。もっと早く思い出せばよかったと後悔した。

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 おそらく、8年ぶりくらいに使用する。ちゃんと動くかしらと心配したが、何の問題もなかった。
 心地よい蒸気が噴出してきて、喉も鼻もサッパリした。
 問題は、この蒸気で髪が濡れることである。パーマをかけているので、髪が濡れると、そこだけ明後日の方向を向いてしまい、非常に見苦しい髪型となる。
 それから、鼻も口もビッショリ濡れるので、タオルを近くに置かねばならない。タオルなしでスイッチを入れたら、水滴があごを伝って、膝の上を濡らしてしまった。
 便利な機械ではあるが、使いかたを考えないと、あとが困る場合もあるのだ。


●職場にて●

 朝イチでスチームサワを使っても、夕方には喉や鼻が痛くなる。どうやら、昼にも使ったほうがいいようだ。
 重かったが、電車に乗って1時間かかる職場まで、えっちらおっちらと、スチームサワを運ぶことにした。
 しかし、どこで使えばいいのだろうか。
 正直いって、人前で、ノズルに鼻を突っ込むのは御免こうむりたい。誰もいない場所を探し、ひそかにシュワシュワしたいものである。
 私は、華道や茶道のための和室に目をつけた。あそこなら、水道もあるし、用がなければ誰も来ない。
 予想は的中し、私は落ち着いて喉と鼻を潤すことができた。
 しかし、鏡を見て仰天した。

 か、髪が〜!!

 スチームは、左右均等にはみ出すわけではないようだ。私の髪は、左側だけチリチリになり、外側を向いてしまった……。ああ無念。
 だが、体が楽になったほうがいい。おかげで、だいぶ治ってきた。この分ならば、明日、明後日にも回復するだろう。

 うちのスチームサワは旧型だが、今の型はもっとカッコいいようだ。

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 職場用に1個あるといいかも……。

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2011年09月23日

らくらく手作りおはぎ

●秋分の日●

 お彼岸に合わせて、生協で「手作りおはぎセット」を買った。

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 これには、もち米、うるち米と、あんの素が入っている。

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 あとは、炊飯器、計量カップ、ボウル、すりこぎ、ラップを準備すれば、誰にでも作れるというお手軽セットである。
 腕におぼえのない身としては、大変ありがたい。


●作り方(10個分)●

@ まずは、もち米・うるち米と、水260mlを炊飯器に入れ、白米と同じように炊く。
  無洗米だから簡単だ。

A 「あんの素」の豆がつぶれるように、袋の上から全体をもみほぐす。
  つぶれたら袋から出し、10等分する。甘味が足りなければ、ここで砂糖を加える。

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B @のご飯が炊き上がったら、ボウルに移し、すりこぎで好みの硬さにつぶす。
  このとき、すりこぎに水をつけ、ご飯がくっつかないように気をつける。

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C Aのあんをラップに平たくのばす。

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D 手に水をつけてBのご飯を10等分し、小さな俵型に丸めたらCのあんに載せる。

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E ラップを丸く包んで、形を整える。

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F 皿に移してできあがり。

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●反省点●

 あんの衣を着せるため、中のご飯を少なめにしないと、大きなおはぎになってしまう。
 10個できるはずだったのに、ご飯が多かったから、6個分しかできなかった。
 どのおはぎもビッグサイズで、ハンバーグのようだ……。

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 できたては、ホカホカしていて軟らかい。
 お腹をすかせた夫が、様子をうかがっていたので、2個食べさせた。「おいしい」と大喜びだ。
 ハート型のおはぎを作ろうと思っていたのに、「温かいうちに手早く」を心がけたら、すっかり忘れてしまった。全部俵型にしたところで、「しまった!」と舌打ちする。
 夫が空いた皿を持って、やってきた。
「お昼は?」
「今食べたでしょ」
「えっ、これだけ!?」
 これだけじゃ、ダメですか……。

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2011年09月19日

冬じゃないけど焼きリンゴ

●リンゴペクチン●

 8月上旬、朝起きたら体がだるかった。体温もやけに低い。体が思うように動かず、貧血の症状に似た感じだ。
 しかし、病院では特に異常がないという。
 根拠はないが、蓄積された放射能によって、不調になったのではないかと疑った。

 震災のあと、福島周辺だけでなく、風下である関東にも、相当な量の放射性物質が飛んできた。テレビでは「ただちに健康に影響はない」と繰り返していたが、あれからもう何カ月も経っている。私は体が丈夫なほうではないので、そろそろ影響が出るのではと心配になった。
 頼みの綱は、リンゴペクチンである。
 リンゴペクチンには、体内にたまったセシウムを排出させる働きがあるらしい。ネットを見て作ろうと思ったが、料理音痴の私には、少々敷居が高い。
 だったら、手軽で美味しい焼きリンゴを作ろうと思った。効果のほどは定かではない。しかし、生のリンゴでも食べないよりはマシだといわれている。リンゴペクチンは、過熱によって働きがよくなり、吸収もアップするそうだから、試す価値はありそうだ。


●材料(4個分)●

 りんご   4個
 はちみつ  大さじ2
 ブランデー 大さじ2
 バター   10g
 シナモン  少々
 塩     少々

 焼きリンゴは紅玉が最適だが、店頭になかったので、旬の津軽にしてみた。
 ブランデーは、ケーキ用の小さなものにした。ウチでは誰も飲まないのだ。


●作り方●

@リンゴを水洗いし、水気を拭き取る。

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Aリンゴの上部を、ヘタの根元くらいまで薄く切り取り、フタを作る。

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B底に穴を開けないように、芯抜き器かスプーンで芯をくり抜く。

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 ウチには芯抜き器がないので、グレープフルーツ用のスプーンを使った。さほど、時間はかからない。

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Cくり抜いた穴に、ハチミツ、バター、ブランデーを4等分して入れる。
 その上から、シナモン、塩をふりかける。

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 シナモンの隣に、ブラックペッパーが置いてある。容器が同じなので、間違えてかけないようにと慎重になった。万一、使ってしまったら悲劇だ……。

Dフタと本体に、楊枝で数箇所穴を開け、フタを載せて元の形にもどす。

E180度に熱したオーブンに入れ、40分ほど焼く。

F皿に移してできあがり。

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●いただきます●

 リンゴペクチンは、皮の部分にたくさんあるようだ。
 しかし、生では硬くて食べにくいから、焼きリンゴで労せず摂るのがよい。
 オーブンに入れてから15分も経つと、リンゴの甘酸っぱい匂いが漂ってきて、食欲を刺激される。

 作り始めてからわかったことだが、傾いたリンゴは使わないほうがいい。くり抜いた穴に液体を入れると、こぼれそうになるから量が減るし、焼いている途中でフタがずれ、落ちてしまう。
 
 焼きリンゴのフタを取ると、穴の中には、甘〜いシロップが待ち受けている。バターもブランデーも、ハチミツやリンゴとほどよくミックスされており、実にいい味に仕上がっている。シナモンの存在感がなかったので、少々多めに振ったほうがよさそうだ。
 ハチミツを多めにすれば、甘味が強くなり、バターやブランデーを増やせば、コクのあるシロップに変身する。好みで加減すれば、いろいろな味が楽しめる。

 本体にナイフを入れると、サクッという手ごたえがある。底が抜け、シロップが皿いちめんに広がっていく。これを柔らかな果肉につけて、温かいうちにいただくのが好きだ。

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 まもなく、体の不調はうそのように治ってしまった。
 リンゴが効いたのか、それとも、単なる心理的な効果なのかはわからない。
 とても美味しかったので、調子がよくても悪くても、焼きリンゴはおやつの定番になりそうだ。

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2011年08月21日

ガンダムカフェでお買い物

●秋葉原●

 秋葉原に行くと、必ずガンダムカフェに寄る。
 だいたい、カクテルを飲んで帰るのだが、夏休みはそういうわけにいかなかった。11時半を回った頃だったので、ランチをしようと思ったのに、入口には長蛇の列ができている。
「あっちゃ〜」
 私は待つのが大嫌いだ。
 ランチはあきらめ、カフェ脇のショップでガンダムグッズを買うことにした。

 レジの前に、ビニール傘が並んでいる。
 しかし、ただの傘ではない。ビームサーベル型のビニール傘なのだ。取っ手が真っ直ぐで長く、ピンクに色づいたビニール部分が素晴らしい。雨が降っていたら買ったかもしれないが、あいにく、その日は晴れていた。


●名セリフクッキー●

 商魂たくましく、ミルク味とチョコ味の2箱セットで袋に入っている。

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 ミルク味のほうには、セイラやフラウ・ボウといったヒロインの名セリフが、チョコ味のほうには、シャアやアムロ、なぜかブライトも含まれたヒーローの名セリフが収められている。

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 何の変哲もないクッキーなのに、あの場面のこの言葉がはいっているだけで、人気商品となるのだから面白い。
 しかし、ガンダム世代でない夫には通用しない。
 お腹が空くと、ガサゴソと箱を漁り、セリフも読まずに食らっている。
「何て書いてあった?」と聞いてみるが、字があったことにすら気づいていない。
「見てないから知らない」と当たり前のように答え、2枚目、3枚目に手を伸ばす。

 ダメだ、こりゃ。

 価値のわからない者にとっては、ただの焼き菓子なのである。


●シフォンケーキ●

 ガンダムカフェでの余計な買い物は続く。
 夏休みはどこにも行かなかったので、職場で配るお菓子がないのだ。いただくばかりで、お返しできないと悪いから、ついでにここで調達しようと考えた。
「これがいいんじゃない?」
 同行した娘が、シフォンケーキを勧める。

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 これなら、無難かもしれない。
 しかし、家に着いたら娘が食べたがり、結局開けてしまった。
 包み紙は、4種類のキャラクターとなっている。

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 中は観光地にありがちな、軟らかいクリームケーキである。

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 とびきり美味しいほどでもないが、普通に喜んでもらえる感じだ。
 でも、家用にしてしまったから、職場には「名セリフクッキー」の残りを持っていくことにした。


●人形焼●

 ショップの入口に、300円のガチャガチャがある。
 中身は、クッション素材のガンプラ焼きか人形焼で、チェーンがついたもののようだ。ガンプラ焼き欲しさに挑戦してみたが、中を開けたら、悲しいことに人形焼だった。
 
 ちぇっ。

 店内には本物の人形焼がある。

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「ガンダムモビルスイーツ」という文字に、思わず噴き出した。
 中には、ザク、グフ、ドム、ズゴック、アッガイ、旧ザクが、全部で10個入っている。
 カステラ部分がパサパサしていて、浅草界隈の人形焼とは比べ物にならないけれども、そういうものだと思って食べれば、それなりにイケる。
 ガチャガチャで当たった人形焼は、「旧ザク」だったようだ。
 本物の「旧ザク」の人形焼と比較してみる。

s-IMG_4083.jpg 

 そっくり!!

 そんなわけで、今、ウチにはガンダムのお菓子ばかりがあふれている……。

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2011年08月06日

空海と密教美術展

●密教とは●

 上野の東京国立博物館平成館で開催されている、「空海と密教美術展」を観てきた。
 7月20日からの公開だから、館内はかなりの人で賑わっている。しかも、お経や三鈷杵などの小さな展示品も多いため、三重四重の人だかりとなり、飴に群がる蟻の気分が味わえる。もうちょっと、落ち着いてから出かけたほうがよいかもしれない。
 タイトルを見て、「密教って何だろう」と疑問を持った。
 調べてみると、仏教の一宗派だが、大日如来が自らの悟りの世界をそのまま説いた、けっして表面上では知りえない秘密の教えのことらしい。つまり、秘密仏教である。
 国宝・重要文化財98.9%という、とてつもない数字もわかる気がした。

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 さらに興味をひかれたのが、「この夏、マンダラのパワーを浴びる。」とのキャッチフレーズだ。
 なにやら、いいことがありそうな気がする。座布団を一枚、差し上げたい。

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●第一章 空海_日本密教の祖●

 お財布くらいしか持っていかなかったが、オペラグラスと鉛筆が必要である。なにしろ、曼荼羅などは細工が細かく、肉眼では十分に楽しめない。特に、最近、老眼が進んできた身には、小さな図柄に手こずってしまう。通と思われる人は、ちゃんと用意していたから感心した。
 また、会場内では、鉛筆以外の筆記具が使えない。私はボールペンしか持って行かなかったから焦った。しかし、係員のお姉さんが、鉛筆を貸してくれたから助かる。
「またお経でしょ。もういいよ、飛ばそう」
 中学生くらいの女の子がこんな会話を交わしていた。それくらい、第一章ではお経が多い。ここでの目玉は、国宝「聾瞽指帰(ろうこしいき)」であろう。空海直筆の草稿本で、力強さや意志の強さが伺える筆使いと称されている。
 他のお経と比べると、空海の字はややクセ字である。模範的な文字ではないが、男性的な魅力を感じる。もっとも、丸文字なんてなかっただろうが……。
 また、重要文化財「崔子玉座右銘断簡(さいしぎょくざゆうめいだんかん)」も印象的だ。これも空海筆といわれており、「短無説己之長」と書かれている。意味は「人の短を道(い)うこと無かれ、己の長を説くこと無かれ」である。
 平安時代も今も、御仏の教えは心に響く。
 

●第二章 入唐求法●

 ここでは、密教法具が印象的だ。五鈷鈴(ごこれい)、錫杖頭(しゃくじょうとう)などが興味深い。写真がなくて残念である。
 期間限定の展示品もあった。
 7/20〜7/30までは、純金製の「金念珠」が展示されていたが、私が見に行ったのは7月31日だった。残念ながら見逃した。
 7/31〜8/11までは、重要文化財「三鈷杵(さんこしょ)」別名「飛行三鈷杵(ひぎょうさんこしょ)」が公開されている。空海が唐から帰国する際、密教を広めるのに相応しい地はどこかと、明州の港から三鈷杵を投げたら、日本まで飛んでいって、高野山の松の枝に引っ掛かったとの伝承が、名前の由来となったそうだ。
 三鈷杵の力なのか、空海の力なのか。
 摩訶不思議である。


●第三章 密教胎動●

 国宝「五大力菩薩像」は、憤怒の形相をした恐ろしい菩薩が描かれている。額には第三の目があり、尋常ではない迫力で、こちらを睨みつける。近寄ったら焼け焦げそうだ。未就学児と思われる小さな子どもも、お父さんに抱かれて見ていたが、「怖いよぅ〜」と目を逸らしていた。気持ちはよくわかる。
 国宝「両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)」は黒ずんでしまい、よく見えない。9世紀のものだから仕方ないか。
 重要文化財「両界曼荼羅図(血曼荼羅)」は、平清盛が大日如来の宝冠に、自らの頭の血を混ぜて彩色したとの言い伝えがあるそうだが、展示期間が合わずに見られなかった。
 ああ、残念……。
 国宝「細字金光明最勝王経」は、大変小さな字でありながら、均整が取れており、この上なく美しい出来栄えのお経である。「うわぁ〜、すごいわねぇ」と感嘆の声をあげる、オバちゃんたちに同意した。
 オペラグラスどころか、バードウォッチング用の双眼鏡が必要かもしれない。


●第四章 法灯_受け継がれる空海の息吹●

 正直いって、第一章から第三章までは、少々退屈だった。
 だが、ここからは違う。
 この展示の一番の見どころは仏像なので、ここからは俄然興が乗ってくる。
 はじめに、重要文化財「大日如来坐像」が目に入る。曼荼羅の中心に位置するこの仏を、私はしげしげと観察した。
 さらに国宝が続く。梵天像、地天像、帝釈天像、火天像、羅刹天像、水天像などがお目見えすると、心の邪気が追い払われるような清清しさを感じる。
 重要文化財「千手観音菩薩立像」は、知名度が突出して高い菩薩像であろう。人ごみの中で、無謀にも私は腕の本数を数えてみた。
「いち、にい、さん、し……」
 43本が確認できた。しかし、奇数というのも変だ。奥のほうは、重なって見えるから、正しい数ではないかもしれない。
 国宝「薬師如来坐像」、国宝「阿弥陀如来および両脇侍像」なども素晴らしかったが、私が目を奪われたのは、重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」である。
 立膝に頬杖、柔和で優しげな顔を少々傾け、くつろいだ姿勢で、もの思いにふけっている様子が個性的でよい。

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 気に入ったので、クリアファイルを購入した。サマージャンボの宝くじでも入れておこうか?


●仏像曼荼羅●

ようやく、真打ちの登場である。「お待たせいたしました!」という声が聞こえそうなくらい、場内の期待が高まっている。
 国宝「梵天坐像」は、ガチョウ4羽に支えられている。平成館までの途中の、看板にも使われていた。逆三角形の男性美が素敵だ。

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  国宝「帝釈天騎象像」は、象の上だ。これもまた、看板に登場している。

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 国宝「金剛法菩薩坐像」、国宝「金剛業菩薩坐像」、国宝「降三世明王立像」、国宝「大威徳明王騎牛像」なども立派で、何度も見たくなる。
 私が一番心を引かれた仏像は、国宝「持国天立像」である。
 これは、四天王のうちのひとつだが、邪鬼を踏みつけ恐ろしい顔で仁王立ちしている。病魔や貧乏神、浮気の虫などを追い払ってくれそうな表情だ。こちらも、クリアファイルをゲットした。

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 国宝「増長天立像」も恐ろしくていい。

 さて、公式サイトでは、仏像曼荼羅コーナーの8仏像の人気投票をしている。
 順位をつける必要はないが、人の好みもあるわけで、ちょっとのぞいてみたくなった。
 私が投票したのは、「持国天立像」である。
 結果を見ると、1位はダントツで「帝釈天騎象像」が選ばれている。2位が「降三世明王立像」、そして3位は、私が投票した「持国天立像」であった。(8月6日現在)

 やったー!!

 
●おみやげ●

 クリアファイルに加えて、食べるものが欲しくなった。何しろ、うちには、年中お腹をすかせた夫がいる。
「ふせん」なるものが目に入る。製造元を見ると、ちゃんと京都で作られている。迷わず、これを買った。

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 一般庶民とはかけ離れた、高貴な味である。
「クリアファイル買ってきたの? 見せて」
 中3の娘が、おみやげ袋をのぞきこむ。彼女が釘付けになったのは、「増長天立像」のほうである。
「あっ、お母さんが足の下に〜」
 私は即座に、「いないから!」と言い返す。
「キャラクターは?」
「何もないみたいだよ」
「なんだ。ミッキョー・マウスとか、作ればいいのにね」
「…………」

 最近、体の調子がいい。
 やはり、マンダラパワーのおかげだろうか。

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 「うつろひ 〜笹木砂希〜」(日記)
posted by 砂希納言 at 11:12| Comment(4) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする