2017年01月31日

トイ・プードル、コーギー

 エッセイ仲間の一人が、年末からマンチカンを飼い始めた。
 彼女は筋金入りの猫派である。メールを送っても返事が来ないのは、キャットファーストになっているからだろう。
 もっぱら、私は犬派なので、猫の可愛いらしさがわからない。
 ありがたいことに、隣のご家庭も犬派だった。まだ娘が保育園児だったとき、沖縄みやげを持ってピンポンしたことがある。
「こんにちは〜! 旅行のおみやげ持ってきました」
「あら、ありがとう」
 奥様が、緩いウエーブのかかった肩までの髪を揺らし、階段を下りてくる。右手には、小さなトイ・プードルを抱っこしていた。
「ウウ〜、キャンキャンッ」
「ピーちゃん、静かにね」
 しかし、ピーちゃんと呼ばれるワン公は、一向に静かにならなかった。奥様を取られると思っているのか、小柄な体で精いっぱいの声を張り上げ吠え続けた。
「ああ、こんにちは」
 そのうち、ご主人までやってきた。ピーちゃんはますますヤキモチを焼き、吠える合間に歯をむき出して、威嚇してくる。なんというわかりやすさ。パパとママが、自分以外にやさしく接するのが気に入らないのだ。
「あら、宅配便かしら」
 奥様が顔を曇らせる。この辺りは袋小路になっているため、業務用のトラックはバックで進入してくるのが普通だ。ピーッピーッという音が聞こえてくると、ピーちゃんはさらに騒ぎ出した。
「この子はね、バックするときの音が嫌いなのよ」
 トイ・プードルにとっては、不審者2人組と耳障りな音のダブルパンチだったらしい。吠え疲れ、帰る頃にはゼイゼイしていた。

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 その後は、宅配便のトラックが来るたび耳をすましてみる。ピーちゃんの「キャンキャンッ」という悲鳴が、必ずといっていいほど、あとに続くからだ。「ふふふ」と笑いがこみ上げてくる。
 お向かいの家では、コーギーを飼っている。まだ子どものようだが、家人にあまり構ってもらえない。退屈しのぎに、うちの玄関を見張っているらしい。一歩家から出ると、「来た来た」とばかりに、境界線の柵に近づいて「ウォウ〜」と呼びかけてくる。

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「あ、モモちゃん、おはよう」
「ウォッ、ウォッ」
 辺りをグルグル回って飛び跳ね、全身で喜びを表現するのは犬の特権か。何とかしてこちらに来たくて、柵を飛び越えようと後ろに下がる。助走をつければ高く跳べると知っているからだ。しかし、1mの柵は犬にとっては鉄格子。決して越えられないと悟り、鼻先だけを出して悲しげに「クンクーン」と鳴く。
 柵越しに頭をなでたり、声をかけてやるだけでモモちゃんは嬉しいようだ。パッと柵から離れて走り回り、舌を出して楽しそうに笑っている。すぐに戻ってきて、また鼻先を出す。その繰り返しである。
 決して、しつけの行き届いた犬ではない。お向かいの幼い末っ子が、「痛い! モモに噛まれた」などと叫ぶこともあった。柵越しに触れ合う程度がちょうどいいのかもしれない。
 ピーちゃんは、高齢のため目が見えなくなり、間もなくいなくなった。
 モモちゃんちも、いつの間にやら引っ越して、もぬけの殻になっている。
 うちでは動物を飼わない。別れがつらいと、何匹もの犬を看取った義母が嫌がるからだ。
 お隣で、ピーちゃんのあとの犬を飼ってくれいと念じてみた。
 ワタクシ、ビーグルが好きなのよね……。

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 「これはしたり〜笹木砂希〜」(エッセイ)
 「うつろひ 〜笹木砂希〜」(日記)
posted by 砂希納言 at 21:31| Comment(3) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする