2016年03月31日

トゥールダルジャンのアスパラガス

 ホワイトアスパラガスの缶詰は、小学校時代からの敵である。
 そもそも、母がこれを料理に多用したことから、私の不幸が始まった。サラダにも肉のつけ合わせにも、白くてネッチョリしていて、歯に挟まるほどスジスジの食材が入っている。
 どうやら、私の母は、この変な臭いのする白い野菜が好きらしかった。
「おはよう。朝ごはんは何?」
「玉子焼き。昨日の残りのサラダも食べちゃってね」
 特に、一日たって水の出たアスパラサラダは、独特の匂いが他の野菜にも移って最悪だった。
「オエ〜ップ」
「砂希、好き嫌いは許さないよ。食べ終わるまで学校に行っちゃダメ」
「えー、そんな」
 イヤイヤ腐ったような臭いの野菜を食べ、絶望的な気分で登校したことをおぼえている。

 オバさんになった今は、缶詰でないホワイトアスパラが、美味しいものだと知っている。
 でも、病的に白くてヒョロッとした姿を見ると、どうしても警戒してしまうのだ。
 年度末、珍しく姉が食事に誘ってきた。
「ねえ、トゥールダルジャンに行かない?」
「いいねぇ」
「フランス産アスパラガスメニューっていうのがよさそうだわ」
「アスパラ……」
 条件反射で体が硬直した。あのサラダとは別物だとわかっていても、生理的嫌悪感はなくならないものらしい。
 でも、春らしいメニューだから、タイムリーという気がする。「いいよ」と言って予約をした。
「いらっしゃいませ」
 ここの従業員は、なぜか全員男性だ。丁寧にお辞儀をして出迎えてくれる。
 ビールは置いていない。シャンパンで、平成27年度の勤労ぶりに乾杯した。

 オマール海老のカルパッチョ レモンコンフィ風味のホワイトアスパラガスと空豆のバヴァロア

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 オマール海老の歯ごたえが好きだ。アスパラの淡白さとコラボして、新しいことが始まるワクワク感を感じさせる。

 フォアグラポワレとホワイトアスパラガス エクルヴィスのラグーとソリレス添え

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 口の中でとろけるフォアグラには、ちょっと甘めのソースが定番だ。これとアスパラがマッチするとは思わなかった。他の食材もフォアグラを囲んで集まり、にぎやかに談笑しているようである。

 メバルとコキヤージュのナージュ アスパラガスとオニオンのハーブ風味

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 ナージュというのはスープ仕立ての料理をいうらしい。メバルの皮はえび煎餅のようにパリパリで香ばしく、緑と白のツートンアスパラがシックで美しい。

 ホワイトアスパラガスのヴルーテとグリーンピースのロワイヤル

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 アスパラはスレンダーな姿を見せない。しかし、液状と化していても、口の中にはフワッとした「アスパラ感」が広がるのだ。

 幼鴨のクルート仕立てとホワイトアスパラガスにのせた彩り野菜

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 鴨が好物だ。オーソドックスにスモークするのもいいが、この食べ方も悪くない。スクエアなお皿に、緑の横線が入るだけで、シャープな印象を与えるのが新しかった。

 グランマルニエ香るオーガニックチョコレートのクリームとカカオのシャーベット

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 やっとデザート。水玉模様のソースが華やかで、花見のシーズンにピッタリだ。しかも、カカオのシャーベットの口あたりが抜群だった。
これにはアスパラガスがない。……当たり前か。
 コーヒーと小菓子でコースは終了する。

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 美味しかった。
 私のアスパラ感が見事に上書きされ、食後は缶詰の味が思い出せない。トラウマもなくなり、ホワイトアスパラに対する警戒心が吹き飛んだ。
 姉は、私以上にゴキゲンだった。
「そういえば、年末に化粧品をいっぱいもらったじゃない? あれでずいぶん出費が抑えられたから、ここは私が出すわよ」
「ええっ」
 化粧品を変えたせいで、使わなくなった洗顔石鹸などをいくつか姉に渡しただけなのに、意外に喜ばれていたようだ。お言葉に甘えて、ゴチになった。
 明日からは平成28年度がスタートする。
 しっかり頑張って働こうっと。

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2016年02月14日

2016 今年のバレンタイン

 毎年バレンタインデーには、夫にチョコレートをあげている。
 決め手は、味より見た目である。中身より、ルックスが大事なのだ。
 今年は2個買ってみた。
 まずは、バラのブーケをかたどったチョコレート。

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 花は個別に選び、箱に入れてもらう。
 このタイプだと7個くらいまでと、店員に言われた。チョコレートは10種類くらいあり迷う。全部食べてみたい気もしたが、夫にあげるものだと思い出して我慢する。
「えーと、抹茶とローズ、ミルク、ブルーベリー、マンゴー……」
 あと何を買ったっけ? 忘れた〜。
 なるべく、色とりどりになるよう気を配る。たとえば、ローズとラズベリーは色が似ているので、どちらかにすればよい。
 義理チョコ、友チョコに一輪ずつ配っても、喜ばれるのではないだろうか。
 それから、花札のチョコレート。

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 3種類入り、5種類入りのミニセットもあった。
 だが、うちでは、夫にあげたはずのチョコを、私と娘が横取りするので、たくさん入っていたほうが便利だ。
 それに、花札にはちょっとした思い入れがある。
 小学生のとき、父から花札を教わったことがある。大晦日で、姉や妹も一緒だった。
「これは松で、これは菖蒲。桜に梅に……」
 札の解説を聞いたあと、「花合わせ」という遊びに興じた。
「これは猪鹿蝶っていうんだぞ」
「これは赤短、こっちは青短」
 私は「月見桜で一杯」の組み合わせが好きだった。決して呑兵衛ではないが……。
 夢中で遊び、気がついたら朝の6時になっていて、家族みんなで夜更かしを笑ったものだ。
 さて、この花札チョコは「華歌留多」という名前だが、全部で36枚のチョコレートが入っている。
 12枚は絵柄のあるホワイトチョコで、その下には24枚の絵柄のないセミスィートチョコが隠してあるのだ。まずは、絵柄なしのセミスィートからいただいて、ホワイトチョコは最後にしておきたい。
 食べる組み合わせも大事である。
 猪鹿蝶、月見桜で一杯、えーとあとはあとは、どういう順番で食べようかなぁ。

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2016年01月31日

酒亭菊姫

 親友の幸枝と飲みに行った。

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「菊姫」は加賀の酒である。かなり評判が高いので、贈り物によいのではと興味を持った。

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 新橋にあるこの店では、すべての菊姫を飲むことができる。持ち帰ることはできないので、欲しければネットで申し込めばいい。
「日本酒しかないのかしら」
 ビール好きの幸枝が、少々不安そうな顔でメニューをのぞきこむ。ところがどっこい、ちゃんとスーパードライが用意されているのだ。
「生2つお願いしまーす」
 乾杯をすませると、料理の注文に進む。コース料理もあるが、単品で頼んだ方が好きなものが食べられる。
「お造りに合鴨ロース、白子ポン酢、ブリ大根ください」
「はーい」
 従業員は男性も女性もフレンドリー。初めての客でも常連でも、分け隔てなく接してくれる。
 お通しが実に美しかった。

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 しかし、意外な落とし穴が潜んでいた。喜んで食べ始めた幸枝が、小さな悲鳴を上げたのだ。
「この鴨、たっぷり辛子がついてた。ひー」
 辛いものが得意でない私が、そそくさと辛子を落としたのは言うまでもない。後出しのほうが得である。
 ビールのあとは、お目当ての日本酒だ。1合は約180ml。これでは酔っぱらってしまうので、お酒に弱い私は60mlの飲み比べにした。お酒によって金額が変わってくるが、どれを選んでも構わないところがうれしい。
「金劒(きんけん)と特選純米、菊理媛(くくりひめ)でお願いします」
 お酒のチョイスは味ではない。ラベルである。

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「菊姫」らしいデザインがいいのだ。
「左から順に飲むのがいいと思います」
 年配の店員さんが、グレードの低いものから飲むよう勧めた。でも、3つとも全部イケる。
「本マグロと甘エビです」

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 とろけるようなお造りに感動する。食材は加賀産にこだわらず、築地で仕入れることもあるらしい。
「出来のいいものは、築地に出荷されますからね。こちらにはかなわないですよ」
 そういうものなんだろうか……。
「合鴨ロースです」
「キャアッ♪」
 私は鴨が大好きだ。歓声を上げて、すぐさま箸を伸ばした。やわらかくて、しっとりした食感がたまらない。
「あ、写真……」
 本当は7枚あったのだが、がっついて食べた分がなくなり、6枚に減っている。

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 白子ポン酢は幸枝のリクエスト。

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「あああ、これ最高! ホント美味しい」
 半分もらったら、その通りだった。白子は料理したことないけれど、チャレンジしてみようかしら……。
「ブリ大根です」
 これも絶品。夢中で食べてしまい、写真どころではなかった。
 実のところ、ワカサギ唐揚げやサラダも食べたかったが、幸枝は小食だ。食べるよりも飲む方が大事らしい。ならば私もとお酒を注文した。たしか、限定酒の「鶴乃里」だったような気がする。
 こちらもいい味。日本酒のよしあしはわからないが、口あたりがよく美味しく感じれば、それはいい酒に違いない。
「デザートに大吟醸アイスを食べようよ」
「いいね、いいね!」

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 やはり、食後に甘いものは必要だ。
「ごちそうさまでした〜」
 お酒もお料理も、本当に美味しかった。
 結果として、どの菊姫も甲乙つけがたく、贈答用に何を選ぶか決められなかった。私は何をしに来たのだろう……。
 やはり、ラベルで決めるしかないかしら。

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2015年12月30日

2015年のソフトクリーム

 今年はやけに「ソフトクリームが食べたいっ!」と思う年であった。
 遊びに行ってパクパク、仕事のあとにパクパク、ランチのあとにパクパクと、一体いくつ食べたかわからない。
 中でも、印象に残った11個を紹介したい。
 まずは、レアなところで高尾山の「桑ジェラート」。

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 もっと青臭いのかと身構えたが、葉の風味が爽やかに漂ってきた。味は悪くないが見た目がよくない。これがチョコだったら、食べる気が失せるような形状だ。売り子のお兄さん、もっと練習して売り上げ伸ばして!
 ちなみに、高尾山では「ハスカップソフト」も食べた。
 こちらも珍しいソフトクリームなので、見た瞬間飛びついた。売り子のお姉さんは、ものの3秒で商品を渡してくれたが、巻き加減が素晴らしい。ほぼ完璧だと見とれていたら、上手い具合に光が差し込んで、神秘的な写真が撮れた。あのお姉さんは神だったのかもしれない……。

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 もうひとつ、レアな日光・龍頭茶屋の「ゆばソフト」。

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 見た目はイマイチなのが残念だが、ちゃんと湯葉の味わいが感じられる。しかも、バニラになじんでいて、もう一ついけそうだった。クリームの水分を増やして、なめらかにすれば美人に変身するのではないか?
 同じ日光では、田母沢御用邸のソフトクリームも印象的だった。

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 牧場のバニラクリームのような深い味わいで、量がたっぷりなところがうれしい。さすがは皇室御用達である。今年食べた中では一番だった気がする。
 次は身近なところで、マクドナルドの「サンデーチョコレート」。

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 この日は飲み会だったので、最寄駅に着いたときは「何か甘いものが欲しい」状態だった。駅前にはマクドナルドがある。「ソフトツイスト」も食べたことはあるが、チョコレートのかかったサンデーがよかったのだ。日光や高尾など、遠くに行かなくても、近場でいつもの味が楽しめるマックは貴重だ。
 ミニストップの「モンブランソフト」も負けちゃいない。

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 わが家の近くにミニストップはないので、わざわざ職場の近くの店舗に寄ってみた。すでに3人の客がモンブランソフトを待っていて、かなりの人気らしい。5分後には私も手にすることができた。モンブランクリームもさることながら、コーンの存在感が大きかったと思う。
 群馬サファリパークにも行った。チョコレートとバニラのミックスソフトが、シマウマを連想させる。

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 チョコレートの味も濃く、これはこれでよかったのだが、一番人気はチョコとバナナの「タイガーソフト」だったらしい。早まったか?
 野田市のキッコーマンもの知りしょうゆ館では、「しょうゆソフト」という、これまたレアなソフトクリームをいただいた。

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 何と美しい仕上がりであろう。だが、しょうゆ味が思いのほか薄くて、少々肩透かし感があった。糖分とのバランスを考えて、控えめになったのかもしれない。私は濃い味が好きなのだが。
 練馬区立美術館に行ったさい、併設の福祉センターでお茶を飲み、ソフトクリームを食べた。

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 ここも美味しかったし、皿が涼しげでキレイだった。舌だけでなく、目でも楽しみたい。
 東武百貨店で北海道物産展を開催したときは、3種類ものソフトクリームをいただくことができた。
 まずは、養老牛 山本牧場の「WILD MILK ソフトクリーム」。

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 ピンと立ったツノがこってり感を表している。濃厚さに満足である。
 それから、とみたメロンハウスの「こだわりメロンソフト」。

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 ここは舌触りがクリーミーで、とろける美味しさが味わえる。メロンとバニラの相性のよさを、あらためて思い知らされた。
 プティ・メルヴィーユの「くりりんカボチャソフト」は独創的なところがウケたのか、長蛇の列ができていた。

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 乾燥してスナック状になったカボチャがオシャレ。しかも、カボチャの甘味やしっとり感が生きていて美味しい。
 会場内には「白桃ソフト」もあったのだが、さすがに一度に4個は無理だった……。人出が多くて店も見つからないし、お腹を壊しては元も子もないので諦めて帰る。ちょっと後ろ髪を引かれた。
 最後に、ソフトクリームではないが、娘の誕生会でデコレーションケーキを切り分けていたら、ケーキが倒立するハプニングが……。

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「あはは、何これ〜」
 集まった親族は大笑い。
 甘いものには、人を笑顔にさせる力がある。
 ソフトクリームさんたち、一年間お世話になりました。
 来年もよろしくお願いいたします。

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2015年11月29日

ニキ・ド・サンファル展

 大学時代の友人が、フェイスブックに「ニキ・ド・サンファル展に行ってきました」とアップしていた。
 あ、この色彩、見たことある。
 どこで目にしたのか覚えていないけれど、妙に惹かれて、私も会場まで足を運ぶことにした。
 
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 しょっぱなから、銃声に度肝を抜かれた。
 ニキは、射撃絵画というスタイルで、注目を集めた時期があったからだ。実演中のモノクロ映像が、繰り返し繰り返し流れている。映像に映っている観客も、耳をふさぐ仕草をしている。これはセンセーショナルだ。
 射撃絵画のひとつがこれ。(リーフレットより)

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 石膏で固めたティラノサウルス・レックスの周りに、絵具を入れた感や袋を貼り付け、銃で撃つことによって、色をつけるのだ。銃へのアンチテーゼと受け止めた。
 それにしても、実弾を使わなくたって……。水鉄砲に、絵具を入れて撃つのではダメなのかしら。
 リーフレットを広げると、原色を使いこなしたニキの感性が迫ってくる。

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 好き嫌いはあるだろうが、私はこういう賑やかな色の配置を好む。
 見ていると楽しくて、ポストカードを何枚も買ってしまった。

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 でも、これは無駄づかいではなく投資である。
 ニキのセンスは尋常ではない。まさに天才! 私の色彩感覚が少しでも豊かになるように、ときどき引っ張り出しては拝みたい。
 会場で撮影できるのは、ファッショナブルな「ブッダ」と

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「翼を広げたフクロウの椅子」である。

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 一部でも撮影可の作品があると、得した気分になれてうれしい。
 素敵だったのは「ナナ」シリーズである。ナナとは、フランス語で「娘」を意味するという。丸くてグラマラス、女性ならではの肉体美が表現されており、鶏ガラ体型の私には眩しく映る。

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 ナナは、女性解放運動を先取りしているらしい。たしかに、気持ちが楽になってくるような作品である。
 ニキの、女性への抑圧に抵抗し、自由に自分らしく、のびのびと生きていいのだというメッセージを受け取った気がした。今年見た中では、かなり満足度の高い展覧会である。
 もし、友人がいなかったら、ニキ展には行かなかったと思う。
 ご縁に感謝するばかりだ。

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2015年10月17日

異国情緒「旧岩崎邸庭園」

 春日通りをはさんで、湯島天神と向かい合うように旧岩崎邸庭園はある。
 ここは、三菱財閥の3代目、岩崎久弥の住まいだったようだ。

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 設計はかのジョサイア・コンドルによって行われ、ルネサンスやイスラム風のモティーフが取り入れられたジャコビアン様式である。シュロの木が実に印象的で、明治時代にこんなハイカラな建物があったことに驚く。

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「足が痛〜い」
 この日、一緒に来た娘は新しいブーツを履いていた。足に馴染まず、本郷3丁目から歩いてきたので、靴擦れはできていないものの、小指が圧迫されて痛かったようだ。
 幸い、館内の見学では下足を脱ぐ。ブーツから解放され、彼女は「ほほほ」と喜んでいた。
 残念ながら、内部は撮影禁止である。きらびやかなシャンデリア、赤い絨毯、存在感のある暖炉など、異国情緒たっぷりな当時の面影は、足を運んでご覧になっていただいたほうがよいだろう。
 非常にロマンティックなお屋敷なので、デートスポットに最適である。でも、この日は家族連れも多く、ちびっ子たちが見たこともない部屋の広さに目を丸くしていた。
 岩崎邸は、洋館と和館に分かれている。洋館は、岩崎家の集まりや外国人、賓客などを招いたパーティーに利用されたらしく、生活臭が残っていない。
 和館が岩崎家の居住空間で、完成当時は建坪550坪というから仰天する。でも、今は広大だった庭園とともに縮小され、緑色の部分しか残っていない。(リーフレットより)

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 それでも、見て回れば小一時間はかかるのだから、岩崎家には底なしの財力があったと感じる。
「ふう、思ったより広いや。疲れたね」
 娘に声をかけると、彼女はもっと疲労を感じていたらしい。
「うん、どこかで休みたいね」
 そんな会話を交わしていると、実に都合よく喫茶室が登場し、これまた驚いた。
「いらっしゃいませ〜」
 少々暑い日だったので、娘は抹茶アフォガートを頼み

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 ホットコーヒーを愛する私は、チーズケーキセットを注文した。

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 館内は撮影禁止だが、ここでは「撮ってもいいですよ」と言ってもらえてありがたい。
 ここまできたら、出口はすぐそこ。ひと休みしたあと、再び履物を取り出す。
「ひいい、またブーツかぁ」
 娘はヨロヨロしながら、庭園を歩き始めた。
 
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 ちょうど、入口の裏側に出たわけだが、洋館のもう一つの顔がまた美しい。

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 友人曰く、「映画のセットのようだね」であったが、まさに同感。
 洋館から地下通路でつながった場所に、撞球室(ビリヤード場)が鎮座していた。

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 洋館の側面も、素敵な表情をしている。

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 見る場所によって、違った景色が楽しめるお屋敷であった。
「あ、赤とんぼ」
 広い庭には、赤とんぼの群れが、スーイ、スーイと飛んでいた。やはり、ここは日本だったのだ。
 帰りはまた、建物正面に戻る。

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 最後まで、シュロの木が目立っていた。

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2015年09月26日

30分限定 日光田母沢御用邸

 特急に乗って日光に行った。東武日光駅からバスで移動すれば安上がりだが、いかんせん本数がない。年寄りもいることだし、少々奮発してタクシーを頼むことにした。
「華厳の滝に竜頭の滝、湯滝のあと、光徳温泉で下車ですか。それだと3時間コースですよ」
 タクシー会社と事前にコースの打ち合わせをしたとき、見たいスポットだけでは30分ほど時間が余るとわかった。かといって、東照宮などビッグな場所では時間が全然足りない。30分くらいで見られる場所はないかと相談したら、ここを勧められた。
「田母沢御用邸はいかがでしょう。ちょうど行程の途中にあるんですよ」
「あら、行ったことないです。じゃあ、そこで」
 しかし、ここはそんなに短時間で見られる場所ではなかった。まず、入口から建物までの距離が長い。
 それもそのはず、旅行誌を見ると、日光田母沢御用邸記念公園と書かれている。そうか、公園だったのかと納得した。
 ようやく建物に着いた。

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「ほえーっ、立派な建物だねぇ」
 同行した娘と姪が驚きの声を上げる。
「そりゃ、御用邸だもん。大正天皇のご静養のため作られたって書いてあるよ」
 中では写真を自由に撮ることができる。窓からの風景もなかなかだ。

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 珍しい展示物が並んでいて、楽しみながら写真を撮った。

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 和室にシャンデリアという組み合わせがユニークだ。

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 ここはビリヤード場らしい。

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 そういえば、上野の旧岩崎邸にも撞球室があった。当時の流行りだったのかもしれない。
 謁見所。

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 意外にシンプルである。

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 トイレも、畳まで敷かれており、用を足すのが悪い気がする。
 もちろん、来客用ではないが……。

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 ここで窓が気になった。以前に旧古河邸を訪れたとき、古いガラスは粒子が粗いと教わったことがある。この部屋の窓も、すべて年代物に見えた。
「はい、こちらは大正時代のものです」
 あちこちに配置されている係員が教えてくれた。
「隣は明治時代です」
「へー」

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 さらに古いガラスを見て、保存状態のよさに皇室の力を感じた。
「こちらは、もっと古くて江戸時代です」
「えっ」
 江戸時代にガラスがあったのかと仰天したら、そうではなくて、壁に描かれた梅の絵であった。

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 いったい、この絵は何歳になるのだろう……。
 時代はわからないが、他にも素敵な絵の数々が見られる。

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 別の部屋に行くと、また別の係員が説明をしてくれる。
「畳をご覧ください。ちゃんと柄合わせをしているんですよ」

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 実家の畳とはえらい違いだ。
 御用邸は風通しがよかった。部屋も広々としているし、ここで暮らしたら、寛大な気持ちで過ごせそうな気がする。

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 桜のシーズンになると、樹齢400年のしだれ桜が華やかに咲き誇るという。まるで時計が止まったかのようなたたずまいに、伝統文化の香りがした。

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「あー、時間オーバーだ。そろそろ行かなくちゃ」
「え、もう?」
 とても30分では見切れない。何しろ、部屋数が106室ある巨大な建物なのである。最低でも1時間はかかるとわかった。残念ながら庭園は見ずに、あわただしく靴をはいた。
 そのままタクシーに乗り込むはずだったが……。
「あっ、ソフトクリーム」
 娘と姪が離れの建物を指さしている。空いていて、ゆっくり食べられそうだ。
「じゃあ、食べちゃおうか」

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 これがとても美味しかった。牧場で食べるものと同じくらい、クリーミーでまろやか。滝付近の混雑した中でいただくより、ずっと落ち着く。
 急いでいることはどうでもよくなった。
「じゃあ、行きましょうか」
 全員が満足して退園する。
 きっと、このソフトクリームは皇室御用達の味だったのだ。
 次回ここに来るときは、時間にゆとりを持とうと反省した。

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2015年08月09日

ファースト世代のための「機動戦士ガンダム展」

 森アーツセンターギャラリーで開催中の「機動戦士ガンダム展」に行ってきた。
 
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 チケットは2枚。

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 大学生の娘はファースト世代ではないが、幼い頃からお台場や東静岡に連れ回され、ガンダムの追っかけに参加している。DVDも見て、それなりに楽しんでいるから、今回も快くつきあってくれた。

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 待ち時間は15分ほどだったろうか。森アーツセンターは、チケットを呈示してからが長い。
 周りを見ると、思った通り、ファースト世代のオジさんオバさんばかりだ。子連れで来ている客もいるが、うちと同様、DVDで予習をしているらしい。小学生くらいの男の子が、待っている間に父親とおぼしき男性に、モビルスーツの話題を振っていた。なかなか高度である。
 第1章は、オープニングシアター「大気圏突入」だ。
 観客席が、ホワイトベースのメインブリッジとなっており、大気圏突入時にシャアが仕掛けた戦いを体験できる。ミライとセイラの位置関係や、「アムロ行きまーす」の一連の動きなど、ホワイトベースの全体像がつかめて興味深い。
 最前列には座席があるが、ここに座ると背後のブライトが見えない。私は、中央部の手すり付近が見やすいと思った。
 終了後は、スタッフが声を張り上げる。
「前にお進みくださーい。戻ってご覧になることはできません!」
 第2章は「メイキング・オブ・ガンダム」。
 じっくり向き合いたいのは、安彦良和氏と大河原邦男氏の原画であろう。
 キャラクター・デザインの安彦良和氏は、油絵のようなタッチで描いた人物に、生命を吹き込む魔術師である。メカニック・デザイナーの大河原邦男氏は、精緻でスタイリッシュなメカを、自由自在に量産する天才である。キャラクターとメカの融合が、ガンダムの魅力のひとつになっていることは間違いない。
「シャア、かっこいい」

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       (映画パンフレットより)

 作品はたくさんあるが、とりわけ、シャア・アズナブルのところには人が集まりやすい。私も娘もシャアのファンだから、一緒になって群がった。
 第3章は「ガンダムは終わらない」。
 ここでは写真が撮れる場所があるので、カメラは必需品である。
 まずは、純プラチナ製(左)、純金製(右)のガンダムをカメラに収める。

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 高そう〜♪
 原画では、断然ジオングだ。

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 ガンダム、ザク、グフ、シャア専用ザク、シャア専用ズゴック、シャア専用ゲルググ、ドムなどもあったが、躍動感の感じられるこの絵が気に入った。
「エルメスとガンダム」のガンプラも素敵だった。ガンダムは、シャアのゲルググに向かってビームサーベルを突きだしたが、ララァの乗ったエルメスがすべり込んできて、こちらに刺さってしまう。

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 まだ実家にいた頃、この場面を見ていてハラハラしていると、母が横から水を差してきた。
「ララァ? ララァの神よ、のララァ?」
 ……アラーだっちゅうの。
 失礼、話が横道に逸れてしまった。
 傷ついたガンダムも、リアルに再現できており、戦いの激しさを物語っている。

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 すべてを見たあとは、おみやげ売り場に向かう。
 まずは食べ物。

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 ビームサーベルポッキーは、中がこんな感じになっている。

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 1本が大きいため、結構お腹にたまる。
 それから、シャアザクのマグカップを買おうとした。
「いいな〜、ミキもシャアのマグカップが欲しいよ!」
 娘も同じものが欲しかったらしい。芸がないけれど、気持ちは理解できるので、同じものを2つ……。

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 中央のペットボトルには水が入っている。これが意外と掘り出し物だった。
 体の線がリアルに再現されており、シャアの肉体美を目のあたりにすることができるのだ。

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 どうです、この厚い胸板。無駄な肉はひとつもなく、すぼまった腰からはプリッと膨らんだお尻に、美しいラインが続いていく。

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 思わずさすりそうになり、「変態か!」と自分を制御した。

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      (映画パンフレットより)

 煩悩の塊を持って会計に向かうと、ここでも予想外の発言が待ち受けていた。
「会計はお一人様1回限りです。また、戻ってのご購入はできません」
 ひょえ〜!
 グッズの売れ行きよりも、会場の混乱を避けることが優先らしい。買い忘れがあったら、また来てねということなのだろうか。
 タイトルは「ファースト世代のためのガンダム展」としたが、サブタイトルには「もう元には戻れない……」とつけ加えてもいいような気がする。
 全体的に満足のいく展示で、合格点をつけたい。
 9月27日までですよ〜!

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posted by 砂希納言 at 13:13| Comment(2) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月19日

上野精養軒「天皇の料理番」コラボメニュー

 佐藤健主演の映画「るろうに剣心」は見たことがあるが、テレビドラマ「天皇の料理番」は見ていない。プロ意識の高い彼を応援しているので、上野精養軒 グリルフクシマのコラボメニューに興味を持った。
 4月13日から8月31日まで限定の、「天皇の食卓を彩った饗応」というコースである。
「お食事の前に、お飲み物はいかがですか」
「じゃあ、グラスのシャンパンをお願いします」
 その日は、東京国立博物館で目の保養をしたこともあり、乾杯したい気分であった。(「クレオパトラとエジプトの王妃展」はこちらから)

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「メロン ポルト酒風味」

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 メロンの風味を生かしつつ、まったく違った味の前菜に仕上がっている。この落差が見事であった。
「舌平目のグージョネット南仏風」

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 グージョネットとは、白身の魚を細く切り、小麦粉やパン粉をつけたあと、手でよるようにして揚げたものを指す。あっさりしていて軽く、食べやすかった。
「ザリガニのポタージュスープ」

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 えっ、ザリガニ? と眉をひそめることなかれ。
 伊勢海老のポタージュですよ、と言われたら信じてしまうくらい、味が似ている。コクとうまみが凝縮されて、実にいい味に仕上がっていた。
「お飲み物はいかがですか」
 シャンパングラスが空きそうになったところで、すかさずウエイトレスが注文を聞きに来る。たしか、夏限定のスパークリングワインがあったことを思い出し、頼んでみると……。

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 あらら、涼しげなブルーではないか。
「こちら、少々辛口になっております」
 はい、お料理との相性もグッドでした。
「真鯛の洋酒蒸し 青豆のバターソース」

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 これが絶品だったのだ。真鯛の上にはトリュフとオマール海老も載っており、青豆のバターソースに絡めていただいたら、「今まで食べた魚料理は何だったんだ」と思うくらい革命的な味がした。まったく別の食材が、チームを組んで協力し合っている融合感。まさに、天皇陛下のお料理に相応しく、ひたすら感動である。
「和牛シャトーブリアンの網焼き」

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 焼き加減はミディアムにしてもらったが、ウェルダンでもよかったかもしれない。かなり軟らかく、高齢者や子どもでも難なくいただける肉料理だ。つけ合わせのホワイトアスパラガスが、いい感じに焙られており、香ばしい。
「デザート」

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 ミニパフェという表現がぴったりかもしれない。フルーツや生クリームの下にはコーンフレークが隠れていて、サクサクとリズミカルにいただいた。
 コースの締めくくりに「デミタスコーヒー」を飲み、至福のひとときが終わる。
 結構なボリュームなのだが、所要時間は90分でおつりがくる。料理と料理の間隔が短く、「まだかな」とイライラさせない気づかいがありがたい。
 また、コースターのおまけがあった。

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 使うことはないかもしれないが、記念にとっておこう。
 ごちそうさまでした。

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2015年07月04日

最後のディナー? 村上開新堂

 年に何度か豪華なディナーをいただくことがあった。
 メンバーと疎遠になったこともあり、最近ではさっぱりだったが、久しぶりにお誘いを受けたので出かけることにした。
「村上開新堂に行ってみる? あそこは紹介制だから、一見さんお断りなのよ」
「へえ〜、行ってみたいです」
 何度か行ったという涼子さんがアポを取り、半蔵門へ。しかし、運悪く当日は大雨。出かけるのがイヤになったが、約束した以上、行かねばなるまい。駅から近い場所にあるのが唯一の救いである。
「いらっしゃいませ。お席にご案内します」
 1階からエレベーターに乗り、2階で下りる。1階で見送ってくれた店員さんが2階で出迎えるところを見ると、階段を小走りに上ってきたのだろうか。階段を走る姿を想像したら、少々気の毒になった。一緒に乗ればいいのに、と思うのだが。
 店内は小ぢんまりしている。
 シャンパンで乾杯したあと、さっそくコース料理に入る。

 温かいパイの前菜(チーズ、ビーフ、トマト風味)

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 徳島県産ハモの焙り焼 胡瓜と青紫蘇のガスパチョ

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 ここで店員さんから注意を受ける。写真を撮るときは、シャッター音を切ってほしいということだった。
 設定を確認してみたが、シャッター音は切れない仕組みになっているようだ。
「くううう〜」
 ……残念ながら、写真はあきらめた。

 若アユのから揚げとパテ ズッキーニと香味野菜のサラダ添
「アユが泳ぐ姿をイメージして盛り付けました」
 説明通り、小さなアユがスイスイ泳いでいるようだが、お見せできなくて残念。
 コース料理は、まだまだ続く。

 ズッキーニのスープ
 冷たいヴィシソワーズもあったが、クリーミーなのにさっぱりしていていい味だった。

 ビュルゴー家のシャラン鴨ロースト 季節の野菜添
 鴨はベーコンのように長くカットされ、軟らかく仕上がっている。トリュフの入ったブラウンのソースとよく合い、「これにしてよかった」と親指を立てたくなった。
 お料理はここまでで、次はデザートだ。

 開新堂ゼリー
 赤、青、茶、黄、白、緑……。色とりどりのゼリーが、大皿に載って運ばれてきた。鶏卵ほどの大きさで、キチッと整列すると迫力がある。皿の振動に合わせて体をくねらせ、オシャレなダンサーが勢ぞろいして躍っているようだ。
「ここからお二つお選びください」
「じゃあ、私は抹茶とワインにします」
 涼子さんは緑と赤のカラフルな組み合わせにしたが、私はチョコレートとミルクというこってり系のコンビにした。ミルクには桃の果肉が入っていると聞き、狙っていたのだ。チョコレートはややビターで、コクがあった。
「おいしい」
 お料理もよかったけれど、私はゼリーが一番気に入った。他の店には真似できない、トラディショナルな香りが漂ってくる。
 デザートはもう一品。
 ビワのコンポートとコーヒーで締めくくる。
 初めて行った店だが、お料理が出てくる間隔が絶妙である。早すぎず遅すぎず、ちょうどいいタイミングで運ばれてくるから、21時ころには店を出られた。
 しかし、仕事のあとのディナーは、そろそろ面倒になってきた。若いころは、むしろ楽しみだったのに、年齢とともに「早く帰りたい」となったのだろう。もしかしたら、今日が最後のディナーになるかもしれない。
 次に来るとしたら、ランチがいい。昼の部は紹介制ではないから、気楽に楽しめそうだ。
 えーと、シャッター音の出ないデジカメなんてあったかしら……。

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