2013年09月29日

名古屋 赤味噌ラガー

 先日、池袋でユニークなビールを見つけた。
 「名古屋 赤味噌ラガー」

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 試飲したら、微妙な味だった。
 味噌とビールの相性はイマイチだ。
 でもまあ、珍しいし面白いから欲しくなった。

 名古屋といえば、中2のときの転校生を思い出す。
 彼女はアサコといい、名古屋から引っ越してきた。
 当時、私はさいたま市に住んでいたので、名古屋のことをよく知らなかった。友達も同じで、「名古屋は大阪の近くだよね」などと、どうしようもない話をしたおぼえがある。
 悪気はなかったけれど、アサコには「名古屋」というあだ名がついてしまった。
 でも、彼女は嫌な顔もせず、ニコニコと笑って返事をしていた。今にして思えば、クラスに溶け込もうと必死だったのだろう。名古屋の言葉は使わず、標準語で話す努力をしていたし、声を掛けると弾んだ声で答えてくれた。
 夏休みには、2泊の林間学校があった。たしか、志賀高原に行ったはずだ。服装はジャージか体育着なのだが、寝るときはTシャツが許されていた。女の子たちは、競うようにオシャレなTシャツを用意する。
「ナオミちゃんの可愛いね」
「ミカちゃんのカッコいい!」
 私は、「キライなものにフタをする」と書かれた、ウケ狙いのTシャツにした。
「砂希のヘン〜!!」
 予想通り、みんな笑ってくれた。
 部屋は急ににぎやかになったが、アサコはジャージの上を着たまま、黙っている。
 理由はすぐにわかった。
 ジャージからのぞいたTシャツの襟ぐりが、悲しいくらいに伸びている。おそらく彼女は、パジャマ代わりのものだからと、古いTシャツを持ってきてしまったのだ。名古屋には、そういう習慣がなかったのかもしれないし、家庭の方針なのかもしれない。ファッションショーに加われず、アサコは静かに布団に入った。気の利いたことが言えなくて、私も友達も声をかけられずに寝てしまった。

 翌年には修学旅行があり、広島に行った。制服かジャージで行動したが、お約束のように、就寝時はTシャツである。また、同じクラスにアサコがいる。その頃は、もう「名古屋」というあだ名ではなく、みんなから「アサコ」と呼ばれるようになっていた。今度は彼女もジャージを脱ぎ、真新しい黄色のTシャツを身につけ笑っていた。
「それ、いい色だね」
「アタシも欲しい! どこで買ったの?」
 友達が、口々にアサコを褒める。一年前の分まで、彼女に言葉をかけているようだった。
「あ、そう? えへへ」
 アサコは、照れながらも満足そうだ。部屋の中は、女の子たちのはしゃぎ声でいっぱいになった。

 アサコが今、どこでどんな生活をしているかは知らないが、この名古屋赤味噌ラガーを見せてみたい。
 きっと、「何これ、ギャハハ!」と笑ってくれるはずだ。

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2013年08月09日

鳥羽みやげ

 さて、これは何に見えるだろうか。

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「パチンコ玉」
 ブッブー。
 そう答えたあなたは、いっぺん三重県に行ったほうがいい。
 この写真は、パチンコ玉ならぬ伊勢志摩地域の名産、真珠なのである。

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 先日、私は両親、妹一家と一緒に、鳥羽まで旅行をしてきた。
「じゃあ、3時20分、ここに集合ね」
 駅に到着したとき、バスの時間まで自由行動となった。世帯ごとに買い物をしたりして、思い思いに過ごす。
「ソフトクリームが食べたい」
 高2の娘がグズグズとうるさいので、私と夫も1階に下りてお茶することにした。
 しかし、いざソフトクリームを前にすると、「北海道産」などと書かれている。
「三重なのに、何で北海道なのさ」
 たいそうガッカリしたが、隣には地元産のアイスクリームがあるではないか。
「これにしようか」
 娘は「塩アイス」、夫は「抹茶アイス」にするという。だが私は、珍しくて美容によさそうな「パールアイス」が気になり、それを注文した。

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 うっほほーい!

 一口食べると、予想通りこってりしていて美味しい。
「交換しようよ」
「いいよ」
 娘とひと口交換してみたのだが……。
「あれ? 何か同じ味じゃね??」
 大ざっぱな舌のせいか、私も娘も、塩アイスとパールアイスの違いがわからなかった。

 鳥羽では、いたるところに土産品の真珠が並んでいる。
 真珠は美しい。店先で何度もチラ見したが、自分でもいくつか持っていることもあり、購入までに至らなかった。雑誌を見ると、「ミキモト真珠島」なる観光スポットもあるけれど、時間がなくて、とても行かれそうにない。今回は、ご縁がないのだと諦めていたのだが……。
「ねえ、最終日はどうする?」
 妹が観光ルートを相談してきた。最初は、伊勢神宮に行こうと考えていた。それが、両親のリクエストで夫婦岩に変わり、さらに天気予報で「猛暑」と報道されたことから、それもやめようという話になったのだ。
「年寄りもいるんだし、無理しないで近場にしようか」
 妹の提案に、私の期待がよみがえる。
「じゃあ、じゃあじゃあじゃあ……」
「ミキモト真珠島あたりでいいんじゃない」

 ビンゴ〜!!

 二転三転したが、念願のパールアイランドに行かれることになったのだ。
「いらっしゃいませ」
 ここでは、真珠を養殖する仕組みや、出荷までの作業などを学習することができる。母貝に核を埋め込む手術や、育った真珠に糸を通す穴を開ける工程を動画で見て、裏方の苦労を理解した。何しろ、養殖の貝は収穫までに半数ほどが死んでしまうそうだ。また、生き残った中にも形や大きさの問題から、製品として販売できないものがある。それらを差し引くと、商品として通用する真珠の割合は、必然的に小さくなる。
 おびただしい母貝の命の上に、パールは気品のある輝きを放っているのだ。

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 勉強が終わったら、パールアートを見る。何といっても、これが観たかった。
「お写真はご自由にどうぞ」
 寛大な言葉をちょうだし、遠慮なく撮らせてもらう。
 まずは夢殿。

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 金とパールの組み合わせは、最強だと思うのだがいかがだろうか。
 隣には、地球儀もあった。

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 陸地には22金、海と湖には真珠を使ったそうだ。真珠は全部で12,541個、赤道にはルビーが377個、黄道にはダイヤを373個ちりばめたというからすごい!
 クラウンにもため息がでる。

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 赤との組み合わせもいいかも〜♪

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 五重塔は、雪化粧をしたようで、非常に清楚な印象を受ける。
 
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 これは大正15年に、フィラデルフィアで開催された米国独立150周年記念万国博覧会に出品された傑作らしい。真珠総数は12,760個だそうだ。平成4〜5年に解体修理を行って、当時の美しさを復活させたという。
 自由の鐘。
 
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 真珠12,250個、ダイヤ366個を使用し、昭和14年、ニューヨーク万国博覧会に出品したものである。だが、鐘にたくした平和への願いもむなしく、博覧会会期中に第二次世界大戦が勃発したという事実が哀しい……。
 真珠で、これだけの芸術品ができるとは驚きだ。
 ひたすら感心していたら、1階にはもっと大物があった。

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 ウエディングドレス!

 こちらにも、13,262個という膨大なパールが使用されているそうだ。きっと、かなりの重量と予測されるが、幸せの重みである。
 いいなぁ〜。

 それなのに、ああそれなのに。
 私が買ったおみやげは、これである。

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 カップ麺……。
 これはこれで美味しいと思う。しかし、あれを見たあとでは物足りない。

 ちなみに、同僚にはキャラメルにした。

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「うわぁ、ありがとうございまーす」
 女性は喜んでくれたが、男性は「はあ?」というような顔をしていた。
 適当過ぎたかも。

 やはり、ここに来たらパールを買わなくちゃ。

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2013年07月30日

福岡タワーから大宰府へ

 何とかと煙は高いところに昇るという通り、私は展望台が好きだ。
 福岡での短い滞在期間に、ぜひ福岡タワーに行きたいと思った。博多駅からバスが出ているが、日曜日とあって、道路が渋滞しており1時間ほどかかってしまった。電車のほうがよかったと後悔する。

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「おお〜」
 苦労したけれど、のっぽのタワーは美しかった。
 まずは展望室へ。エレベーターの待ち時間で、写真を撮ってくれる。気に入ったら帰りに買うことができる。撮影が終わると、コンパニオン調のおねえさんが「きれいに撮れタワー」と声をかけてくれる。
 展望室では、何といっても海。

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 沖縄ほどキレイではないが、関東とは違った趣があっていい。

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「ああ楽しかった」
 海を堪能したあとは、余計なものが目につく。
 まずは、「あなたが生まれた日の新聞を発行します」というもの。1枚400円だが、やってみた。私が生まれた日は、ときの佐藤栄作首相が沖縄返還に尽力しているという記事が一面に大きく載っていた。
 
 まだ、返還されていなかったのか!!

 結構ショックである。
「ミキも」
 同行した娘も400円を投入した。こちらは平成生まれだ。偶然とはいえ、沖縄の記事がトップに出ていたところでシンクロした。

「楚辺」緊急使用 不許可へ

 そして、憲法記念日なので、「憲法施行 50年目に」とも書いてある。
「へえ、すごいじゃん」
 一面だけだが、記念日の新聞は興味深い。
 それから、ガチャガチャが気になった。

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「ねえ、右端の大宰府のストラップ、可愛いよね。お母さん欲しいなぁ」
「やってみたら?」
「うん」
 200円を入れてハンドルを回すと……何と、お目当ての大宰府ストラップが出てきた!
「やった〜!」

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 気をよくして、翌日は大宰府天満宮に行くことにする。

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 本殿だけでなく、九州国立博物館も見どころの一つらしい。だが、あいにく、その日は月曜日だった。

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「ありゃあ……」
 入口付近の看板に入館を拒絶され、お参りだけでいいやと決めた。
 まずは太鼓橋を渡る。

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 池が落ち着いた雰囲気を醸し出している。

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 絵になる光景だと感心した。

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 この池には鯉だけでなく、たくさんのカメが住んでいた。

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 泳いだり甲羅干しをしたりして、のんびり過ごしている様子が微笑ましい。
 大きな門をくぐって進む。

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 麒麟が凛とした立ち姿で迎えてくれる。

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 撫で牛は直射日光を浴び、暑そうに座っていた。背中と頭をなでなでし、ご利益を祈る。

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 そして本殿。
 中ではご祈祷が行われており、荘厳な空気が漂っていた。
 私も道真公に祈る。仕事上の失敗が増え、もっとしっかりしなければと思っていたところだった。「アタマよくなりたーい」との願いは、子どものときから変わらない。
 お祈りがすみ、おみやげを買う。
 ちょうど、仕事守なるものを見つけ、迷わず購入した。

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 あとは、おみくじだ。
 私が引いたおみくじは「小吉」である。

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 心だに まことの道にかなひなば いのらずとても 神や守らん

 心が正しければ、祈らなくても神が守ってくれるという意味だろうか。
 ちょっと安心して先を読んだ。

 変化の多い運気です。仕事面、家庭面、勉学面などプラスへの変化の兆しが見えます。積極的に対応することが肝要です。

 わお!
 道真公に、私の願いが通じたのだろうか。
 また来ることがあるかしら、と後ろを振り返り、天満宮をあとにした。
 もし機会があったら、今度は月曜以外にして、九州国立博物館も見たいものだ。

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2013年05月18日

クラコレ、コレクレ

 珍しく、高2の娘の方から「美術館に行きたい」と誘ってきた。
「ルノワールの絵がたくさんある展示があるんだって。絶対見たい」
 それはおそらく、三菱一号館美術館の「奇跡のクラークコレクション」であろう。73点の展示作品のうち、ルノワールは22点というから、かなりの割合だ。
「ミキは『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場』って絵が好きなんだよね。あるかなぁ?」
「さあね」
 有楽町からすぐのところに、この美術館はある。都心で大変便利だ。

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 10時を少々回ったばかりだったが、すでに長蛇の列ができていた。
 最後尾のプラカードには、「40分待ち」という文字が見え、ガッカリするが、待つしかない。

「モネも結構好き」
 ようやく順番が来て、中に入ることができた。印象派の明るい色彩がいいのだと、娘が主張する。
 シスレー、ピサロなどの作品も揃っていた。
 ドガも4点あったが、彼だけは戸外ではなく室内での作業を好んだという。
「あった、ルノワールだ!」
 自画像は、決して美男子に描かれていない。実際のところはどうだったのだろう。クリアファイルに小さく、この絵も入っていた。(下段の右から2つ目)

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「うちわを持つ少女」は不思議な絵だ。ルノワールならではの、透き通るような肌をした美少女が、満足そうな微笑みを浮かべてうちわをかざしている。

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(クリアファイルより)

「これ、日本のうちわだよね」
「どこから手に入れたんだろうね」
 着ているものから、夏ではないと思われる。珍しいものを手に入れた少女が、遊んでいるのかもしれない。
「劇場の桟敷席(音楽会にて)」もミステリーの香りがする。

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(クリアファイルより)

 妖艶なご婦人が、こちらを見つめている。目が合うと、思わずそらしたくなるほどの色っぽさだ。
 だが、完成した当初は、茶色の幕の場所に男性もいたという。人物は3人いたわけだが、依頼人に気に入ってもらえず、男性を幕の下に塗りこめて修正したらしい。
 男性を退場させ、茶色の背景にすることで、女性の肌の白さやなまめかしさは引き立つ構図となった。私はこのほうがよかったと思う。
「タマネギ」はノーマークだったが、大変気に入った。

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(クリアファイルより 下半分)

 スーパーで売られている、大量生産のタマネギと違い、生命の息吹が感じられる。根や芽が奔放に伸びていて、色艶もよく、とても美味しそうだ。
「ほら見て、ルノワールも、たまねぎ氷健康法にハマってたんだよ!」
「んなわけないでしょ。バカなこと言ってないで、次、次!」
 私はもっと見ていたかったのに、娘に押されてしまった。
「ヴェネツィア、総督宮」も素敵な一枚だ。
 青を基調とした景色が、異国情緒を高めている。こちらはマグネットを買い求めた。

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「うちわを持つ少女」のマグネットも一緒である。
 終わったときには、正午を回っていた。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場、なかったね」
「残念だったね」
 調べてみたら、オルセー美術館所蔵となっていた。パリに行ったら、見られるかもしれない。
 
 お昼を食べようと、店を探す。
 入口付近では、だいぶ行列が短くなっていた。
「……ちょっと、待ち時間20分だってよ」
「ホントだ。早く来ると混んでるってことか」
「チェッ、せっかく早起きしたのに」
 ここは、午後になってから、ゆっくりと入館するのがいいらしい。
 開催期間は5月26日まで。
 お早めにどうぞ!

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2013年04月07日

ルーベンスって誰?

 この春は、美術展が充実している。
 ぜひとも観たいもののひとつに、ルーベンスがあった。高2の娘を連れて、渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムに足を運ぶ。
「ルーベンスって誰?」
「……」
 娘はよく変な質問をする。おそらく、「ルーベンスってどんな人?」と聞きたかったのだろうが、「誰」で通じると思っているのだ。
「誰って、ルーベンスでしょ。何をした人とか、どんな絵を描いた人って聞いてよ」
「うん、まあ、そうかもね。今の子は、これで通じるんだよ。年寄りにはダメだね」
「……」
 ルーベンスは、ベルギー出身の画家である。
 しかも、単なる画家ではなく、美術品のコレクター、建築家、外交官としても名を馳せ、何か国語をも操るマルチリンガルだったという。
 リーフレットやチケットには、彼の自画像が載っている。

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 ヒゲが立派だ……!
 多分野における才能に恵まれながら、彼はそれに甘んじることなく、他の画家の作品を模写し、画風を取り入れるなどの努力を怠らなかったそうだ。たとえば、この「毛皮をまとった婦人像」は、ティツィアーノ作品の模写である。

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(リーフレットより)
 ルーベンスは子だくさんで、最初の妻イザベラとの間に3人、イザベラ死後に迎えた二人目の妻エレーヌとの間に5人もの子供がいたという。子煩悩なよき父親だったのではないだろうか。
 夭折した兄の子を描いた「眠る二人の子供」からも、幼子への愛情が見てとれる。

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(リーフレットより)
 また、チケットを飾る大作「ロムルスとレムスの発見」も大きく取り上げられており、絵の説明が加えられていた。

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(チケットより)
 ルーベンスの絵は、女性も子どもも、肉感的なふくよかさが特徴である。
 ガリガリの現代女性は貧相で、モデルの価値すらなさそうな気がした。
「ヤンって名前が多いね」
 ルーベンスの父は、ヤン・ルーベンス。工房の弟子にも、ヤン・ブックホルスト、ヤン・ファン・デン・フッケなどの名が見てとれる。共同制作者にも、ヤン・ウィンデンス、ヤン・ブリューゲルなる画家がいた。ベルギーだけでなく、オランダやチェコ、ドイツ、ポーランドなどにも多いようなので、無難な名前なのだろう。
「お腹すいた」
 芸術鑑賞には体力がいる。すべての展示を観たあとは、空腹を感じていた。
 しかし、ルーベンス展開催記念メニューのメイン料理は、タラである。

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「タラかぁ……」
 真鱈は、鍋物に入れるイメージが強く、ランチには向いていなかった。
 代わりに、バタークリスプを買ってみる。

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 ベルギー王室御用達のワッフル型クッキーだが、バターの風味が生きており、サクサクしていて大変美味だ。

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 6枚入りだが、少々物足りないので、10枚くらい入れてもらいたい。とても美味しい。
 ルーベンス展を観たあとは、もうちょっと太めでもいいような気がしてきた。
 さて、娘は、ルーベンスがどんな人だったか、理解できただろうか。

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2013年03月31日

上野のラファエロ

 上野・国立西洋美術館で、ラファエロ展を開催している。
 銀座に出る用事があったので、ついでに寄ってみた。

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 平日だが、春休みのせいか、チケット売り場には長蛇の列ができている。
「やだ、あんなに混んでるよ」
 高校生の娘が露骨に顔をしかめる。3月22日から4月7日までは、学生証さえあれば、高校生は無料で入場できるから得だ。この期間を狙うべきだろう。
 窓口は3つ開いており、10分も待たずに順番が来た。
 さあ、ラファエロ展の始まりだ。
 まずは、自画像から。
「なんかさぁ、色が暗くない?」
 娘は茶や黒の多い絵に、不満げである。
 ラファエロは、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロに影響を受けたらしい。「無口な女(ラ・ムータ)」などは、モナ・リザっぽい雰囲気がある。
「目が怖い」
 なおも、娘は絵にケチをつける。
 たぶん、ラファエロの描く顔が好みではないのだ。笑ったり怒ったりの表情に乏しく、キリスト教関連のものばかりだから、すっかり飽きてしまったらしい。
「ルノワールとかの印象派がいいよ。あっちのほうがキレイ」
 絵にはひと通り目を通しているが、じっくり観るほど心を惹かれないようだ。小さなサイズの絵が多いことも、一因かもしれない。
「あっ、あれ、スゴイ」
 唯一、彼女がじっくり観た作品がある。「聖ステバノの殉教」だ。人々から石で打たれ、殉じるステバノが大きな織物に描かれており、迫力満点の大作であった。
 逆に、目を背けた作品は「嬰児虐殺」。イエス・キリストの誕生を知ったヘロデ大王が、自らの地位を奪われる心配をし、ベツレヘムで2歳以下の男児をすべて殺害させるのだ。キリストは、その前にエジプトに逃れており、無事だった。
 皿にまで、この絵が描かれているのが不思議である。まさか、この皿で料理を食べたりしないだろうが……。
「ふー、終わったぁ」
 娘は、「欲しいものがないから」と、ショップも素通りしていく。
 入場無料だと、お金を払った分楽しもうと思わないのかもしれない。失敗した。
 ここは、「考える人」のグッズがとても多い。ネクタイ、ストラップ、タオルなど、かなりマニアックな印象だ。私はゴッホの、薔薇をイメージしたチョコレートが欲しかったが、2100円もするので躊躇した。娘はイライラして、じれったそうに言った。
「ねえ、早く〜」
「そうだ、まだ時間にゆとりがあるから、常設展見ていかない?」
「やだ。疲れたから座りたい」
「あ、あそこに『すいれん』ってレストランがあるよ」
「うほうほ〜」
 疲れたときは、お茶を飲むのが一番だ。私も娘も、競うようにレストランに飛びこんだ。
「グレープフルーツ白ぶどうジュースにしよう」
 娘は、長い名前の飲み物を注文した。

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 この飲み物は、美術館らしい、個性的なデザインのタンブラーで運ばれてきた。ひと口飲ませてもらったが、グレープフルーツの苦みが、白ぶどうの甘さで中和されているような、飲みやすさであった。
「美味しい」
 休憩を挟むと、とたんに元気が出てくる。飲み終わったあとは、シャキッと立ち上がった。
 レジで、焼き菓子を見つけた。
 店名になっている、クロード・モネの「睡蓮」のパッケージに入ったマドレーヌやフィナンシェの詰め合わせと、パンダのサブレ―の二種類があった。
「パンダがいい。おばあちゃんも喜ぶよ」
 たしかに、義母にうけそうなのはパンダである。一箱買って帰った。

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「ああ疲れた」
 美術館から移動してランチ、制服のお直し、さらにはドコモショップに寄ってきたので、家に着いたのは夕方になっていた。
 ブーツを脱いで、娘は「あっ」と声を上げた。
「小指に水ぶくれができてる!」
 左足小指の爪の下あたりに、プクッと丸い膨らみができており、少々痛そうだ。
「もう〜、美術館で無駄に歩いたからだよ!」
 いやいや。
 さんざん絵にケチをつけた小娘の不幸に、天国のラファエロが「うほほほ」と笑ったような気がする……。

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2013年03月30日

手軽にマキシム・ド・パリ

 たまたま、生協のカタログに、マキシム・ド・パリのクーポンがあった。5000円でランチが食べられるらしい。これはお手軽。
 数年前に、姉と一回、友達と一回出かけたことはあるが、最近はご無沙汰だ。ちょうど結婚記念日があるからと、久しぶりに予約を取った。
 ソニービルの地下3階に下っていく。足元のレトロな赤い絨毯が、お祭り気分を盛り上げてくれる。
「いらっしゃいませ」
 男性は、ジャケット着用がお約束だ。夫は張り切り、いつになくオシャレしていた。
「お化粧室をお使いになりますか」
 テーブルは、さらに階段を下りたところにある。食事中に中座すると、また階段を上がらなければならない。手を洗うためにも、先に使用したようがよいだろう。
 ここのトイレは見事だ……。

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「わあ、キレイ! こんなトイレ、見たことないよ」
 娘は感動し、写真を撮り始めた。ついでに、ツイッターでつぶやいたらしい。「マキシムなう」などと書いたのだろうか?
「お待たせ〜」
 たっぷり待たされた夫が、お腹を空かせて座っていた。階段を下り、食卓へと案内してもらう。
「すごーい」
 日常生活とはかけ離れ、店内の華やかなこと、華やかなこと。
 食器を見るだけでも、気分が浮かれてくる。

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「ねえ、お父さん、トイレがすごくキレイだったでしょ」
 娘がうっとりと話しかけるが、夫は首をかしげている。
「男性用は普通だった……」
「あっそ……」

「お飲み物は何になさいますか」
「お母さん、ノンアルコールワインがあるよ! これならミキも飲める」
 娘はワインに幻想を抱いているようだ。無理もない。親族が集まると、必ずワインを開けるから、よほど美味しいものだと思うのだろう。
「でもね、ワインは甘くないし、子どもが喜ぶ飲み物じゃないよ」
「ふうん……。じゃあやめとく。モモジュースにしようっと」
 ちなみに、私はヴォーヌロマネのグラスにした。

 お料理が運ばれてきた。
 春野菜とノルウェー産スモークサーモンのプレッセ香草風味ドレッシング。

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 オニオンとコンソメのスープ。

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 フランスシャラン産鴨胸肉のグリエ、ソースエルブ きのこコンフィと。

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 ミルフィーユと桜のアイスクリーム。

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 コーヒー。
 
 すべて美味しくいただき、家路に就いた。
 帰りの電車の中で本を読む。ちょうど、湊かなえの『夜行観覧車』が佳境に入ったところである。ページをめくると、カップラーメンにお湯を注ぎ、ツルツルと食べ始めるシーンが出てきた。
 やけに、美味しそうに見えるのはなぜだろう。ちょっと前に、正統派フレンチを胃袋に収めたばかりだというのに、不健康なものが魅力的に映る。

 今はお腹いっぱいだし。

 しかし、夕方になると、フレンチはすっかり消化され小腹が空いてくる。カップラーメンの誘惑に負け、ついつい余計なものを戸棚から出してしまった。

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 カップラーメンではないが、このノンカップ麺はゴミも出ないし、塩味が私の好みだ。
 お湯を入れて、待つこと3分。ホッカホカのラーメンができ上がった。

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 おいし〜♪

 こってりしたフレンチのあとは、さっぱりした塩味のラーメンをお勧めします!
 なんて言ったら、マキシムに怒られちゃうかな。

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2013年02月27日

笹木式「運命の人を四字熟語で表すと」

 あなたの運命の人を、四字熟語で占います。
 まず、西暦、誕生月、誕生日を書いてください。
 そして、西暦から誕生月と誕生日を並べた数字を引いてください。
 私の場合は、1967年10月18日ですから、1967−1018=949です。
 そして、この数字を一桁ずつ足してみましょう。9+4+9で22となります。
 さあ、判定を見てみましょう。
 
 1 …… 傍若無人   14 …… 他力本願
 2 …… 頑固一徹   15 …… 魑魅魍魎
 3 …… 完全無欠   16 …… 中肉中背
 4 …… 器用貧乏   17 …… 大胆不敵
 5 …… 厚顔無恥   18 …… 八方美人
 6 …… 極悪非道   19 …… 被害妄想
 7 …… 支離滅裂   20 …… 容姿端麗
 8 …… 誇大妄想   21 …… 品行方正
 9 …… 才子佳人   22 …… 不老不死
10 …… 時代錯誤   23 …… 文武両道
11 …… 質素倹約   24 …… 無芸大食
12 …… 人権蹂躙   25 …… 三日坊主
13 …… 大器晩成   26 …… 無色透明

「不老不死」ですか……。
 夫には生命保険をかけているんですがね。
 今度は、妹を占ってみたいと思います。
 1971年9月7日ですから、1971−907=1064 
1+0+6+4で11。
「質素倹約」ですね。おっと……。
 義弟には、まあそんなところがあるようなないような。
 両親はどうなんでしょう。
 父は1938年6月28日だから、1938−628=1310 
1+3+1+0で5。
「厚顔無恥」! あっはっは、これはまさしく母のことに違いありません!
 母は1942年1月23日で、1942−123だから1819。
1+8+1+9で19。
「被害妄想」。……まあ、わからなくもないですね。父は、物事を悪く受け止めることがあります。
 あ、夫を忘れていました。1946年6月16日です。1946−616で1330、1+3+3+0で7。
 えっ、「支離滅裂」って誰のことですか? まさか、私ではないでしょう! 夫は運命の人に巡り合えなかったわけか。
 最後は娘です。1996年5月3日だから、1996−503で1493。1+4+9+3で17。
「大胆不敵」? 将来の息子が、大泥棒か詐欺師だったらどうしましょう。
 まあ、遊びですからね。
 あまり本気になりませぬよう……。

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2013年01月19日

小田原 アジの開き

 夏は遠出できなかったので、正月くらいは泊まりがけの家族旅行をしようと思い立つ。
 とはいっても、手軽な関東圏がいい。温泉に入りたかったこともあり、小田原に決めた。
 神奈川の大学に通っていたおかげで、小田原には友達がいた。彼女の案内で、曽我梅林、小田原城などを散策したことを思い出す。
「お母さん、お城が見えるよ!」

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 娘が右側を向いて叫んだ。小田原駅からは、小田原城の天守閣が見える。城址公園に行きたい人も、道に迷う心配がない。
 正面入口を目指して歩いていたら、「旧青橋の橋桁」という古めかしい展示物を見つけた。

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「弾痕だって」

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 夫が、珍しく熱心に観察している。終戦間際の傷跡を保存し、平和教育に利用するのはよいことだ。
 こんなに分厚い鉄板でも貫通するのだから、人間などひとたまりもないだろう。

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 あえて、この場所に置いたのは、たくさんの観光客の目に触れることを狙っているらしい。
「あれかな」
 小田原城址公園に到着したようだ。

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 私は濠が好きだ。朱塗りの橋がかかっていることで、素晴らしいコンビネーションが生まれている。

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 非常に気に入り、フェイスブックのカバー写真にもした。
 橋の反対側の眺めも、歴史が感じられていい。

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 人をおそれぬ鳥たちが、エサを強奪しそうな勢いで群がってくる。残念ながら、何もない。

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 門をくぐると急ぎ足になる。真っ先に、行きたいところがあるのだ。

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「鎧兜や着物を着て、武士・お姫様に変身!!」
天守閣の手前に小さな小屋があり、ここで体験用甲冑・打掛の貸出を行っている。私は打掛を着てみたかった。
「3人ですか。600円です」
 係のおじさんに、100円玉をジャラジャラと渡す。夫は興味がないと思ったのに、意外に乗り気であった。
 ペラペラの安っぽい衣装を予想していたが、結構本格的だった。笠も重量感たっぷりで、下を向くとずり落ちてしまう。私は何も考えずに、タートルネックの服を着てきたことを後悔した。襟の合わせ目から、現代がのぞいてしまうのだ。
 まあいっか……。
「写真は各自で撮るんですけどね。今、空いているから撮ってあげますよ。じゃあ、そこに立って」
 パシャ。

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 私のデジカメで、おじさんが記念撮影してくれた。何てラッキー!
 撮影後は、すみやかに衣装を返す。くれぐれも、タートルネックは避けてください〜!
「写真、見たい」
 夫は相当気に入ったようで、カメラにジッと見入っていた。
 25年前に来たときは、もっと動物が多かった気がする。加えて、敷地内に小田原城内高校があった。案内してくれた友人が、「ここ、アタシの母校」と言っていたのだが、2004年に小田原高校と統合され、なくなったらしい。
 時代の変遷を感じたひとコマだった。
 天守閣からの眺めを堪能したあとは、ホテルに向かう。

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 小田原ヒルトン リゾート&スパ
 腰痛持ちの夫がいるときは、和洋室を選ぶ。

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 ベッドは私と娘が使い、夫は畳の部屋に布団を敷くのだ。

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 広くてゆったりできた。

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 お目当てはスパ。私はのぼせやすいので、湯温の低いバーデプールでまったりするのが性に合う。気合いを入れて、新しい水着も買っておいた。2時間ほどつかり、家事や仕事の疲れから解放された。
 しかし、大浴場の湯は何とかならないものか。塩分が強すぎて、荒れた肌や切り傷にピリピリしみるのだ。箱根のユネッサンにあった「死海風呂」と似ている。
「痛いね。もう出ようか」
「うん」
 夫に聞いたら、男湯も同じだったという。ここはクリアしてほしいところである。
 翌朝、部屋から見た朝日が感動的だった。

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「きれ〜!」
 朝食のあとは、おみやげを買って東京に帰るだけだ。
「俺は、鈴廣のかまぼこが欲しいんだ」
 食いしん坊の夫は、小田原駅に着くなり、かまぼこ目指して突進した。義母へも買っていくらしい。
「アジの開きも買ったよ」
 
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 その日の夕食に焼いたのだが、身のほぐれも抜群で香ばしく、たいそう美味しいアジだった。
 一方、私が買ったおみやげは、アジの開きサブレ―である。

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 箱を見た瞬間、これだ! と思った。ユニークで実に楽しい。

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 味は、甘いものが苦手な人でも食べられるくらい、あっさりしている。軽くてビスケットのような食感だ。こってり系を期待すると、もの足りないかもしれない。
「疲れたよ〜」
 娘が昼寝を始めた。

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 あれっ、アジの開きに似ている……!

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2012年12月25日

年末年始は恵比寿に行こう!

 私はエッセイ教室「ごめんあそばせ」に通っている。
 メンバーは皆、40代以上の美熟女である。いつも仲良しで、月1回の合評会のほか、年末には忘年会も行っている。今年の忘年会会場は、恵比寿の「メゾン・エメ・ヴィベール」であった。

「いらっしゃいませ」
 店内は、大変豪華できらびやかだ。従業員の方の感じもよく、満足のいくサービスが受けられそうな予感がした。
「ねえ、あれ、本物のもみの木じゃないかしら」

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 入り口付近に、大きなツリーが飾ってあった。床には、乾燥した葉がパラパラと落ちている。やはりそうらしい。アメリカなどでは、一般家庭でも気軽に買えるそうだが、日本ではほとんどお目にかかれない。木の温かみが感じられ、気持ちが和んだ。
 おしゃべりや写真撮影をしていたら、ようやくメンバーが揃い、テーブルに移動する。さあ、忘年会の始まりだ。

 まずは、「一口のお愉しみ」が運ばれてくる。

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 こちらの店は、コンソメが自慢だそうで、実にバランスのよい味わいが楽しめる。「おかわり」と言いたくなる美味しさだ。
 前菜は、3種類の中から「タラバ蟹と各種野菜のテリーヌ」を選んだ。

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 色彩も豊かだし、カニがいいアクセントになっている。メンバーも、ほとんどこれをチョイスしていた。
 スープは、一瞬「オニオングラタンスープ」にしようかと思った。
 だが、私は何日か前に、同じスープで口の中を火傷した。それを思い出し、「カリフラワーのクリームスープとオマールエビのコンソメジュレ ウニ風味」にした。

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 このスープは、大変クリーミーで舌触りがよい。ウニもたっぷり入っている。スープの下には、冒頭の「自慢のコンソメ」が隠れているので、あっという間に皿が空になる。
 空になったあとは、またまた「おかわり!」と言いたくなるのだ。
 来年、美しいマダムたちとのディナーには、ぜひこちらを予約したい。
 メインディッシュは「国産牛フィレ肉のポワレ 赤ワインソース」である。
 お料理が来る前に、何本ものナイフがトレイに載ってやってくる。
「ステーキ用のナイフです。持ち手には水牛の角を使用しておりますが、一つひとつ柄が違うので、お好きなものをお選びください」
 メンバーは顔を見合わせ、順番に好みのものをチョイスしていく。私は白めの角を選んだ。

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 このフィレ肉も、とてもいい味だった。ソースはしつこくなかったし、肉の脂もほどよくのっている。

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 2切れだけでもボリューム満点で、舌もお腹も納得するメインだった。

 ああ、幸せ……。

 12月は、忘年会、クリスマスと続き、満腹月間である。しかし、その中でも、このお料理はピカイチだ。牛フィレの王道という印象を受けた。
 一口のデザートが続く。

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 デザートも3種類から選べるが、私は「ショコラ80%カカオをつかった温かいビスキュイショコラバニラのアイスクリームとくるみのカラメルソース」というものにした。

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 アイスやシャーベットが多い中で、これは温かくてよかった。80%カカオはとてもコクがあり、重鎮のような存在である。香ばしさに惹かれ、リピーターになりそうだ。
 最後に、コーヒーと小菓子で終わりとなる。
 最初の予想通り、ウェイターさんもウェイトレスさんも、笑顔を絶やさず気の利いた会話ができて、いい忘年会ができたと思う。今度は、家族や友人と来たい。

 さて、クリスマスのあとは、お正月である。
 恵比寿といえば七福神だ。どうも駅の周辺には、「ゑびす像」なる立像が設置されているらしい。
 矢印を頼りに探しに行くと、あったあった。台座に「L」マークがあるところを見ると、ライオンズクラブが関わっていると思われる。

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 この屈託のない笑顔がいい。さすがは福の神だ。
 見ると明るい気分になれるので、携帯の待ち受けにしてみた。
 今年はまずまずの年だった。来年も、きっといいことが待っている気がしてきた。
 ご覧になっている貴方。
 よろしければ、えびす様の画像をお使いくださいな〜♪

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